Travel Trade

ランドオペレーターLand Operator

読み: らんどおぺれーたー別名: ランオペ・ツアーオペレーター・旅行サービス手配業者・手配会社

海外(または国内)の旅行会社から依頼を受け、日本国内の宿泊・交通・ガイド・食事・体験といった「地上手配(ランド部分)」をまとめて行う専門業者。旅行者に直接販売せず、旅行会社と現地の事業者の間に立つB2Bの存在。

この用語の要点

  • 旅行者ではなく「旅行会社のパートナー」として、日本国内の手配を一手に担うB2Bの事業者
  • 海外の旅行会社は地域の宿や体験を直接は知らない。ツアーに組み込まれるかどうかは、ランドオペレーターに知られているか・提案しやすい形で情報が渡っているかで決まる
  • 2018年1月施行の改正旅行業法で「旅行サービス手配業」として都道府県知事への登録が義務になった
  • 取引はNET価格(卸値)で行う。タリフ(料金表)とプロダクトシート(商品提案書)を渡すのが営業の基本動作
  • DMC(Destination Management Company)とほぼ同じ意味で使われるが、DMCは企画提案型のニュアンスが強い

ランドオペレーターとは何をする会社か

海外の旅行会社が日本ツアーを売るとき、現地のホテルを一軒ずつ予約し、バスを借り、ガイドを探し、昼食の店を押さえ、体験施設と時間を調整する……という作業を、自社で全部やることはまずありません。言葉の壁もあり、日本の商習慣も分からないからです。そこで「日本側で地上の手配をまとめて引き受ける会社」に発注します。これがランドオペレーターです。

「ランド(land)」は、航空券(air)に対して「現地に着いてからの部分」を指す業界用語です。宿泊・移動・食事・ガイド・入場・体験など、旅行者が日本の地面の上で体験することの手配を全部まとめて「ランド」と呼びます。

地域の観光事業者から見ると、ランドオペレーターは「自分の商品を海外の旅行会社に届けてくれる卸問屋」のような存在です。自分で海外の旅行会社を一社ずつ回らなくても、ランドオペレーターのツアーに組み込まれれば、その先の複数の旅行会社に流通します。

商流の中での位置づけ

インバウンドの商流(3ルート)海外の旅行者が地域の事業者に届くまでの3つのルート。①海外の旅行会社→日本のランドオペレーター→事業者(NET価格で取引)、②旅行者→OTA→事業者(コミッション発生)、③旅行者→SNS・自社サイト→事業者(直販)。① 旅行会社経由団体・富裕層・オーダーメイド志向の個人旅行者海外の旅行会社取引はNET価格(卸値)日本のランドオペレーター② OTA経由自分で検索して予約する個人旅行者(FIT)海外の旅行者(FIT)予約ごとにコミッション(手数料)OTABooking.com・Viator・GetYourGuide など③ 自社直販若い世代・リピーター・SNSで見つける旅行者海外の旅行者(FIT)手数料は決済分のみSNS・自社サイト・メディア記事地域の観光事業者(宿泊・飲食・体験・物販)ポイント・ターゲットによって使う商流が変わる。欧米豪の富裕層・家族連れは①、アジア圏や若い世代の個人旅行者は②③が中心・訪日旅行者の約9割は個別手配(観光庁 インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書)。それでも①を外せないのは1人あたり消費額が大きいため・「OTAだけで十分」と決めず、①と②③の両方の入口を用意するのが基本
インバウンドの商流(3ルート)。2026-08-10 Kachisai定例会セミナーの図を再作成

インバウンドの商流(お金と人の流れ)は、大きく3つのルートに分かれます。ランドオペレーターが登場するのは①のルートです。

ルート流れ主なお客様
①旅行会社経由海外の旅行会社 → ランドオペレーター → 地域の事業者団体、富裕層、オーダーメイドを望む個人旅行者
②OTA経由旅行者 → Viator・GetYourGuide・Booking.com などのOTA → 地域の事業者自分で検索して予約する個人旅行者(FIT)
③自社直販旅行者 → SNS・自社サイト・メディア記事 → 地域の事業者若い世代、リピーター

観光庁のインバウンド消費動向調査(2025年年次報告書)では、訪日旅行者のうち航空券や宿泊を個別に手配した「個別手配」が87.2%を占めます。つまり多数派は②や③で動くFITです。それでも①のルートを無視できないのは、欧米豪の富裕層や家族連れが「現地の信頼できる旅行会社にオーダーメイドで組んでもらう」形を好み、一人当たりの消費額が大きいからです。このお客様に届く入口は、実質的にランドオペレーターしかありません。

法律上の位置づけ:旅行サービス手配業の登録制度

ランドオペレーターは長らく法律上の定義がなく、誰でも名乗れる存在でした。2016年1月の軽井沢スキーバス事故を一つの契機として旅行業法が改正され、2018年1月施行の改正旅行業法で「旅行サービス手配業」という業種が新設されました。

観光庁の説明では、旅行サービス手配業とは「報酬を得て、旅行業を営む者のため、一定の行為を行う事業」で、次のような手配が対象です。

  • 運送(鉄道・バス等)または宿泊(ホテル・旅館等)の手配
  • 全国通訳案内士・地域通訳案内士以外の者による有償の通訳案内の手配
  • 輸出物品販売場(消費税免税店)における物品販売の手配

これらを旅行会社のために行う事業者は、主たる営業所のある都道府県知事の登録を受け、営業所ごとに「旅行サービス手配業務取扱管理者」を置く必要があります。登録の有無は、観光庁の「旅行業登録の確認」ページから各都道府県の一覧で確認できます。

事業者側の実務としては、初めて取引するランドオペレーターが登録業者かどうかを一度確認しておくと安心です。登録業者であれば、法律上の管理体制のもとで手配を行っている相手だと分かります。

地域の観光事業者にとって、なぜ重要なのか

理由は3つあります。

  1. 自分では会えない旅行会社に、商品を届けてくれる。 ドイツやオーストラリアの旅行会社に地方の小さな体験事業者が直接営業するのは、言語・時差・信用の面で現実的ではありません。ランドオペレーターは日常的にそうした旅行会社と取引しているので、そこに組み込まれれば一気に流通します。
  2. 決済と言語の壁を引き受けてくれる。 旅行会社との取引は英語での契約、外貨建ての請求、支払いサイト(締め日から入金までの期間)の交渉などが伴います。ランドオペレーター経由なら、事業者は日本の会社と日本語・円で取引できます。
  3. 定番コースに入ると、毎年続く。 旅行会社のツアーは一度カタログに載ると翌年も再掲されることが多く、単発のOTA予約と違って見通しの立つ売上になります。

裏を返すと、ランドオペレーターに知られていない地域・事業者は、①のルートには最初から存在しないことになります。「問い合わせが来ない」のではなく「選択肢に入っていない」状態です。

取引を始めるための実務

まず用意するもの

ランドオペレーターは日々大量の手配をさばいているので、「自分のツアーに組み込みやすい形」で情報が届くかどうかで反応が変わります。最低限、次の2点をセットで用意します。

  • タリフ(料金表): NET価格(卸値)と、参考としてのGROSS価格(販売定価)。時期や人数区分ごとの価格、有効期間
  • プロダクトシート(商品提案書): 所要時間、受け入れ可能人数(最少催行人数と最大)、集合場所とアクセス、対応言語、アレルギーや宗教食への対応可否、キャンセルポリシー、写真

これらが揃っていないと、ランドオペレーターは旅行会社に提案できません。「興味はあるけれど、まだ商品になっていない」と判断され、保留になります。

連絡の取り方

  • 地域のDMOや観光協会に「取引のあるランドオペレーターを紹介してほしい」と相談する
  • JNTOや自治体が主催するインバウンド商談会に参加する(ランドオペレーターがバイヤー側で出席する)
  • 近隣で既に団体を受け入れている施設に、どの会社経由か聞いてみる

避けたいこと

  • NET価格を出さずに「定価から相談で」と伝える(提案の土台がなく後回しになる)
  • 直販サイトでNET価格に近い値段で売る(旅行会社の販売価格を下回ると、取引が止まる)
  • 一度決めたNET価格を年度の途中で変える(旅行会社のカタログは1年単位で動く)

よくある誤解と、似た言葉との違い

「ランドオペレーター=旅行会社」ではありません。 旅行会社(トラベルエージェント)は旅行者に販売する側、ランドオペレーターはその裏側で手配する側です。旅行者と直接やり取りするのは旅行会社です。

DMC(Destination Management Company) は、ランドオペレーターとほぼ同じ役割を指す英語圏の呼び方です。違いを挙げるなら、DMCは「その土地に根ざして、企画段階から提案する」というニュアンスが強く、単純な手配代行よりも付加価値を打ち出した呼称だと考えると分かりやすいでしょう。海外の旅行会社とのやり取りではDMCという言葉のほうが通じやすい場面もあります。

DMO(Destination Management/Marketing Organization) は綴りが似ていますが別物です。DMOは観光庁が登録する「観光地域づくり法人」で、地域全体の観光戦略を立てる公的な組織。手配業務は行いません。

商談会で「御社はDMOですか?」と聞かれて「はい」と答えたら、話が噛み合わなかった。相手が聞きたかったのはDMCだった。

こうした取り違えは珍しくありません。相手がどの言葉で何を指しているかを、最初に一言確認しておくと安全です。

よくある質問

ランドオペレーターと取引するには、自分も旅行業の登録が必要ですか?

自分の施設や体験を自分で提供するだけなら、原則として旅行業登録は不要です。宿泊施設が自分の部屋を売る、体験事業者が自分の体験を売るのは、旅行業法が規制する「他人の運送・宿泊サービスの手配」に当たらないためです。ただし、他社の宿泊や交通を組み合わせて一つの商品として販売する場合は旅行業登録が必要になることがあります。判断に迷う場合は、都道府県の旅行業担当課か観光庁の相談窓口で確認してください。

ランドオペレーターからの手数料は、どのくらい取られますか?

ランドオペレーターは「手数料を取る」というより「NET価格(卸値)で仕入れて、旅行会社に自社の利益を乗せて卸す」形で成り立っています。事業者が受け取るのはNET価格そのものなので、手残りはNET価格を決めた時点で確定します。業界では販売定価(GROSS)に対して10〜20%程度の差を見込むことが多いと言われますが、商品の種類や取引量で大きく変わるため、必ず個別に確認してください。

小さな体験事業者でも、ランドオペレーターは相手にしてくれますか?

団体バスを受け入れられる規模でなくても、少人数のオーダーメイド旅行や富裕層向けのプライベートツアーには、むしろ「他にはない小さな体験」が求められます。相手にされないとすれば、規模ではなく「商品として提案できる形になっていない」ことが原因である場合がほとんどです。タリフとプロダクトシートを整えて、受け入れ人数の上限と最少催行人数をはっきり書いておくことが第一歩です。

ランドオペレーターは日本の会社ですか、海外の会社ですか?

インバウンドの場合、旅行者を送り出す海外の旅行会社から見て「日本側で手配する会社」なので、日本国内に拠点を持つ会社が中心です。海外資本の会社の日本支社や、海外の旅行会社が自前で持つ日本法人もあります。いずれにしても日本で旅行会社のために手配を行う以上、旅行サービス手配業の登録対象になります。

出典・参考

  1. 観光庁「旅行業法概要」 — 旅行サービス手配業の定義・登録先・対象となる行為
  2. 観光庁「旅行業登録の確認」 — 各都道府県の旅行業者・旅行サービス手配業者一覧へのリンク
  3. 観光庁「訪日外国人の消費動向 インバウンド消費動向調査結果及び分析 2025年 年次報告書」 — 旅行手配方法(全目的): 個別手配 87.2%、個人旅行パッケージ利用 3.2%(p.11)

公開 2026.10.04 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。

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