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食の多様性対応(アレルギー・宗教食)Dietary Requirements

読み: しょくのたようせいたいおう(あれるぎー・しゅうきょうしょく)別名: 食の多様性・Dietary Requirements・Dietary Restrictions・ベジタリアン対応・ヴィーガン対応・ハラール対応・ムスリム対応・アレルギー対応・宗教食

宗教・信条・健康上の理由で食べられないものがある旅行者に対し、食材や調理方法を確認・調整し、その可否を事前に正確に伝えること。ベジタリアン・ヴィーガン、ムスリム(ハラール)、食物アレルギーなどが代表的。

この用語の要点

  • ベジタリアンには、ヴィーガン、ラクト・オボ・ベジタリアンなど複数の類型があり、食べられるものが違う。観光庁のガイドは「まず類型を正しく理解する」ことを第一段階に置いている
  • イスラームでは豚肉・アルコール飲料を避けるとされ、豚由来の成分(ゼラチン・ラード等)や、みりん・料理酒にも注意が要る。解釈は宗派・国・個人で異なる
  • 食物アレルギーは命に関わることがある。表示義務がある特定原材料は2026年4月からカシューナッツが加わり9品目
  • 観光庁の調査では、ベジタリアン等の約3割が「使用する食材がメニューに明記されていないと入店しない」と回答している
  • 完璧な対応より「何ができて、何ができないか」を事前に正確に書くことが、旅行会社との取引でも信頼につながる

食の多様性対応とは:3つの代表的な食事制限

海外からの旅行者には、宗教・信条・健康上の理由で食べられないものがある人が少なくありません。旅行会社との取引では、英語で「Dietary Requirements(食事の要件)」と呼ばれ、予約時に必ず確認される項目の一つです。

代表的なものは次の3つです。理由も、守り方の厳しさも、受け入れ側が確認すべき点も違います。

種類主な理由受け入れ側の要点
ベジタリアン・ヴィーガン宗教、動物愛護、環境保護、健康など類型によって食べられるものが違う。出汁や調味料の動物性原料
ムスリム(ハラール)イスラームの教え豚・豚由来成分、アルコール、肉の処理方法
食物アレルギー体質(免疫の反応)微量でも重い症状が出ることがある。混入の防止

このほか、ユダヤ教の食の規定(コーシャ)、小麦などに含まれるグルテンを避けるグルテンフリー、仏教やヒンドゥー教に由来する菜食などもあります。いずれも人によって守り方の程度が違うため、種類の名前だけで判断せず、本人や旅行会社に具体的に確認するのが基本です。

ベジタリアン・ヴィーガン:類型で食べられるものが違う

観光庁の「飲食事業者等におけるベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド」(令和2年4月版)は、ベジタリアン等の類型を次のように整理しています。

類型肉魚介類乳製品卵
ヴィーガン××××
ラクト・ベジタリアン××○×
オボ・ベジタリアン×××○
ラクト・オボ・ベジタリアン××○○
ペスカタリアン×○○○

ヴィーガンは、これに加えて蜂蜜やゼラチンなど動物由来の成分全般を避けます。同ガイドは、ラクト・オボ・ベジタリアンが欧米などで最も一般的なベジタリアンであること、台湾に多いオリエンタル・ヴィーガンは仏教の考えに基づき、ニンニク・ニラ・ラッキョウ・ネギ・アサツキの「五葷(ごくん)」も食べないことを紹介しています。

日本料理で見落としやすいのが出汁です。野菜の煮物や味噌汁でも、かつお節や煮干しの出汁を使えば、魚を食べないベジタリアンには対応できていないことになります。「野菜だけの料理です」と伝える前に、出汁と調味料まで確認します。

同ガイドの外国人ベジタリアン等へのアンケートでは、約3割が「使用する食材がメニューに明記されていないと入店しない」、同じく約3割が「食材変更のリクエストに柔軟でないと入店しない」と回答しています。

ムスリム(ハラール):豚・アルコールと、その由来成分

観光庁の「ムスリムおもてなしガイドブック」は、イスラームにはハラール(許された行為・物)とハラーム(禁じられた行為・物)という考え方に基づく規範があり、食における代表的なハラームは豚肉やアルコール飲料だと説明しています。

受け入れ側が注意すべき点は、豚肉そのものだけではありません。

  • 豚由来の成分: 豚骨スープ、ラード、乳化剤・ショートニング・ゼラチン・コラーゲンなどに豚由来のものが含まれる場合がある
  • アルコール: 多くのムスリムは酒(みりんを含む)を口にしない。醤油など調味料に含まれる微量のアルコールを避ける人もいる
  • 豚以外の肉: イスラームの方法で処理された肉(ハラール肉)以外は避けるべきとされる

同ガイドブックは、教えの解釈や実践方法は宗派・国・地域・個人によって異なり、世界統一の基準はないとしています。「ハラール認証を取らないと受け入れられない」と考えて諦める前に、使っている食材と調味料を正確に開示し、旅行者自身に判断してもらうという対応もあります。食事以外では、1日5回の礼拝の時間と場所への配慮も求められます。

食物アレルギー:命に関わる情報として扱う

食物アレルギーは、宗教や信条による食事制限とは性質が違います。消費者庁の「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」(令和8年4月作成)は、重篤な症状を呈する場合もあり、最悪の場合は死に至ることもあると説明しています。原因となる食品も、反応が出る量も人によって異なります。

食品表示法に基づき、容器包装された加工食品には次の特定原材料9品目の表示が義務付けられています(カシューナッツは2026年4月1日から追加)。

えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)

このほか20品目が、表示を推奨する「特定原材料に準ずるもの」とされています。

この表示義務は容器包装された加工食品が対象で、体験や飲食店でその場で出す料理には同じ形では適用されません。それでも、海外の旅行者から見れば「アレルギーがあると伝えたのに出てきた」は重大な事故です。体験で出すお茶菓子、試食、昼食の弁当も含めて、使っている原材料を一覧にしておくことが受け入れの前提になります。

なお、英語で "allergy" と伝えてくる旅行者の中には、医学的なアレルギーではなく好みや信条で避けている人もいます。逆に、本当に重いアレルギーの人もいます。区別がつかないときは、重い側に合わせて扱うのが安全です。

実務:「対応できないこと」を明記する

観光庁のベジタリアン・ヴィーガン対応ガイドは、対応の段階を次のように示しています。

  1. 類型・食事制限・ニーズを正しく理解する
  2. 既存メニューをそのまま、または一部の食材を変更したり抜いたりして提供する
  3. 専用メニューを考案し、通常メニューで提供する
  4. 調理器具やキッチンを分け、混入を完全に排除する

同ガイドは、まず基礎知識を得て既存メニューで対応し、メニューに明記するところから始めることを勧めています。キッチンや調理器具の分離は、専門店でない限り基本的に不要としています。

地域の小さな事業者にとって大切なのは、できる範囲を正確に書くことです。コンテンツタリフ やプロダクトシートには、次のように書き分けます。

書き方例
できることヴィーガン対応の昼食に変更可(3日前までに連絡)
条件付き豚・アルコール不使用の献立は可。ハラール認証の食材は使用していない
できないこと調理器具の分離はできないため、重度のアレルギーには対応できない
「全部に対応できないなら、書かないほうがいいのでは」

受け入れを始めたばかりの事業者から、よく聞かれる迷いです。実際には逆で、旅行会社やランドオペレーターは「対応できない」情報があれば別の手配を考えられます。困るのは、何も書かれておらず当日に問題が発覚することです。

よくある誤解

「ベジタリアン=野菜料理を出せばよい」ではありません。 類型によって乳製品・卵・魚の扱いが違い、出汁や調味料の動物性原料も問題になります。

「ハラール対応=認証が必須」とは限りません。 認証を求める旅行者もいれば、食材の開示があれば自分で判断する旅行者もいます。どこまで求めるかは人によって違うため、旅行会社を通じて事前に確認します。

「アレルギー表示の義務がないから、伝えなくてよい」ではありません。 法律上の表示義務の範囲と、旅行者を事故から守るために必要な情報は別のものです。

「一度確認したから大丈夫」ではありません。 仕入れ先や調味料の銘柄が変われば原材料も変わります。原材料の一覧は、仕入れを変えたときに更新します。

よくある質問

ベジタリアンとヴィーガンの違いは何ですか?

観光庁のガイドでは、ヴィーガンは肉・魚介類・乳製品・卵を食べず、蜂蜜やゼラチンなど動物由来の成分全般も避ける類型とされています。ベジタリアンには、乳製品や卵を食べるラクト・オボ・ベジタリアンなど複数の類型があります。どれに当たるかは、本人に具体的に確認するのが確実です。

ハラール認証を取らないと、ムスリムの旅行者は受け入れられませんか?

認証がなくても受け入れている事業者はあります。観光庁のガイドブックは、教えの解釈や実践方法は宗派・国・個人で異なり、世界統一の基準はないとしています。豚・豚由来成分・アルコールを使っていないかを含めて、食材と調味料を正確に開示し、旅行者に判断してもらうのが現実的な第一歩です。

体験で出すお菓子にも、アレルギー表示が必要ですか?

食品表示法の表示義務は、容器包装された加工食品が対象です。市販の個包装菓子を出すなら、その包装に表示があります。手作りの菓子や料理には同じ義務はかかりませんが、旅行者の安全のために原材料の一覧を用意し、特定原材料9品目を含むかどうかを答えられるようにしておくことが望まれます。

食事制限への対応を、旅行会社にはどう伝えればよいですか?

コンテンツタリフやプロダクトシートに、対応できるもの・条件付きで対応できるもの・対応できないものを分けて書きます。何日前までに連絡が必要か、追加料金がかかるかも併記します。対応できない項目を明記しておくと、旅行会社は事前に別の手配を検討でき、当日のトラブルを防げます。

出典・参考

  1. 観光庁「飲食事業者等におけるベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド」(令和2年4月版) — ベジタリアン等の類型と食事制限(p.5)、メニュー明記・食材変更への柔軟性を求める回答が約3割(p.11)、対応の段階Step0〜3とキッチン分離は専門店以外基本不要(p.17-18)
  2. 観光庁「ムスリムおもてなしガイドブック」(2015年8月初版・2018年3月増補) — ハラール/ハラームの考え方、教えの解釈は宗派・国・個人で異なり世界統一基準はない(p.4)、豚・豚由来成分・アルコール(みりん含む)・ハラール肉(p.5)、1日5回の礼拝(p.6)
  3. 観光庁「多様な背景を有する訪日外国人旅行者の受入環境の充実」 — ムスリム・ベジタリアン・ヴィーガン対応ガイドの掲載ページ
  4. 消費者庁「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」(令和8年4月作成) — 特定原材料9品目(えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生)は表示義務、20品目は推奨(p.2)、重篤な場合は死に至ることもある(p.2)、容器包装された加工食品への表示(p.1)
  5. 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」 — 2026年4月1日にカシューナッツを特定原材料に追加、表示義務は容器包装された加工食品が対象

公開 2026.10.07 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。

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