Pricing & Terms
NET価格・GROSS価格Net Rate / Gross Rate
GROSS価格は旅行者が支払う販売定価、NET価格は旅行会社やOTAに卸す際の価格(=事業者の手残り)。「GROSS − コミッション(手数料)= NET」の関係にあり、旅行会社との取引はNET価格を基準に進む。
この用語の要点
- GROSS(グロス)は「お客様が払う値段」、NET(ネット)は「自分の手元に残る値段」。差額が旅行会社・OTAの取り分(コミッション)
- 旅行会社やランドオペレーターは、必ずNET価格で聞いてくる。GROSSしか決めていないと商談が止まる
- 値付けは「手残りで最低いくら必要か」からNETを決め、販路ごとの手数料率を足してGROSSを逆算する
- 直販サイトの価格を旅行会社のGROSSより安くすると、旅行会社は売れなくなり取引が止まる(価格崩れ)
- 一度出したNET価格は、旅行会社のカタログ期間(多くは1年)中は据え置くのが前提
NETとGROSS、まず関係式で覚える
旅行業界の価格は、2つの値段を使い分けます。
- GROSS価格(グロス): 旅行者が最終的に支払う販売定価。パンフレットやウェブに載る値段
- NET価格(ネット): 旅行会社やOTAに卸すときの価格。事業者の手元に実際に入る金額
関係は一本の式で表せます。
GROSS価格 − コミッション(販売手数料) = NET価格
たとえば体験1名10,000円で売ってもらい、手数料が20%なら、NET価格は8,000円。事業者の手残りは8,000円で、2,000円が旅行会社の取り分です。
現場の会話では「ネットでいくら?」「グロス表示でいい?」「R(アール)はいくつ?」のように短く使われます。Rはコミッションのことで、「R20で」は手数料20%という意味です。
計算例:手数料率が変わると、手残りはこう変わる
同じGROSS 10,000円の体験でも、販路によって手数料率が違うため、手残り(NET)は変わります。
| 販路の例 | GROSS | 手数料率 | NET(手残り) |
|---|---|---|---|
| 自社サイトで直販 | 10,000円 | 決済手数料のみ(例 3.6%) | 9,640円 |
| 旅行会社・ランドオペレーター | 10,000円 | 例 15% | 8,500円 |
| 体験系OTA | 10,000円 | 例 20〜30% | 7,000〜8,000円 |
※手数料率は商品・契約・国によって異なります。たとえばGetYourGuideは「掲載は無料で、成立した予約にのみ手数料がかかる」「料率は国によって異なり、登録後に提示する」と公式に説明しており、具体的な率は公開していません。表の数値はあくまで試算用の例です。
逆に、「手残りで最低8,000円は必要」と先に決めて、販路ごとにGROSSを逆算する方法もあります。
| 必要な手残り(NET) | 手数料率 | 必要なGROSS |
|---|---|---|
| 8,000円 | 15% | 9,412円(8,000 ÷ 0.85) |
| 8,000円 | 20% | 10,000円(8,000 ÷ 0.80) |
| 8,000円 | 25% | 10,667円(8,000 ÷ 0.75) |
「GROSSから手数料を引く」のではなく「NETを手数料率で割る」のがポイントです。8,000円に25%を足して10,000円にすると、手数料25%を引かれた手残りは7,500円になり、500円足りません。
なぜ旅行会社は「NETでいくら?」と聞いてくるのか
旅行会社やランドオペレーターにとって、事業者の商品は「ツアーの部品」です。宿泊、移動、食事、体験のそれぞれを仕入れて組み合わせ、自社の利益を乗せて一つのツアー価格を作ります。このとき必要なのは「いくらで仕入れられるか(NET)」であって、事業者が一般向けにいくらで売っているか(GROSS)ではありません。
観光庁のインバウンド消費動向調査でも、団体ツアー参加者や個人旅行パッケージ利用者は「パッケージツアー参加費」として旅行会社にまとめて支払い、その中から各事業者への支払いが行われる構造が説明されています。旅行者が払う総額と、事業者が受け取る額の間には、必ず旅行会社の取り分が入ります。
だから商談で「定価は10,000円です。手数料はご相談で」と答えると、旅行会社は見積もりが作れず、話が前に進みません。NETを先に提示するのが商談の作法です。
NET価格の決め方:手残りから逆算する手順
- 原価を全部出す。 材料費、人件費(自分の時間も含める)、保険、会場費、送迎のガソリン代、消耗品。見落としやすいのは「準備と片付けの時間」と「予約対応のやり取りの時間」
- 最少催行人数を決める。 1名でも開催するのか、2名からか。1名開催ならその1名で原価を回収できるNETが必要になる
- 必要な手残り(NET)を決める。 原価に、続けていくために必要な利益を乗せる。ここが「これ以下では受けない」線になる
- 販路ごとの手数料率を確認し、GROSSを逆算する。 前の章の「NET ÷ (1 − 手数料率)」で計算する
- 販路間でGROSSを揃える。 直販、OTA、旅行会社で旅行者が見る価格がバラバラにならないようにする
- 有効期間を決めてタリフに書く。 「2027年4月1日〜2028年3月31日」のように期間を区切る。旅行会社のカタログは年単位で作られるため、途中変更は嫌われる
季節で価格を変える場合は、ハイシーズン・レギュラー・オフの区分をタリフに明記しておきます。
現場で起きやすい失敗
直販のほうが安い(価格崩れ)
最も多いトラブルです。旅行会社がGROSS 10,000円でカタログに載せたあとで、事業者が自社サイトで8,500円のキャンペーンを打つと、旅行者は「旅行会社で買うと損」と気づき、旅行会社は売れなくなります。次の年からその商品はカタログから外れます。旅行者から見える価格(GROSS)は、どの販路でも揃えるのが原則です。値引きしたいときは、旅行会社にも同じ条件を伝えてから行います。
NETをGROSSと勘違いして赤字
「10,000円でお願いします」と伝えたつもりが、旅行会社側は「NET 10,000円」と理解し、旅行者には12,000円で販売していた。逆に、事業者側がNETのつもりで8,000円と伝えたら、旅行会社は8,000円がGROSSだと思い、手数料を引いた6,800円しか支払われなかった。どちらも実際に起きる話です。金額を伝えるときは必ず「NET」「GROSS」のどちらかを明記する。 税込か税抜かも同時に書きます。
手数料率を足し算してGROSSを決めてしまう
前の章で触れたとおり、NET 8,000円に手数料25%を「足して」10,000円にすると、手残りは7,500円になります。NETを「1 − 手数料率」で割るのが正しい計算です。
全販路で同じNETにしてしまう
旅行会社経由とOTA経由では手数料率が違うのに、同じNETで出すと、どちらかのGROSSが高くなりすぎるか、手残りが足りなくなります。販路ごとに手数料率を確認し、GROSSを揃えた上でNETを調整します。
よくある質問
NET価格は税込ですか、税抜ですか?
業界で統一されたルールはなく、取引先によって違います。日本国内の旅行会社との取引では税込で話すことが多い一方、海外の旅行会社やOTAは税抜(または税の扱いを別記)で考えることがあります。消費税分だけで10%の差が出るので、タリフには必ず「税込」「税抜」を明記し、最初の商談で確認してください。免税や非課税になる取引ではない限り、消費税は事業者側の負担になります。
GROSS価格は旅行会社が勝手に決めてよいのですか?
契約によります。事業者が「販売希望価格(GROSS)」を提示し、旅行会社はそれを尊重しつつ自社ツアーの中で価格設定するのが一般的です。ただし旅行会社がパッケージ全体の価格をどう組むかは旅行会社の裁量なので、事業者の商品単体のGROSSがツアー価格の中で見えないこともあります。事業者が守るべきなのは「自分の直販価格を、旅行会社に提示したGROSSより下げない」という一点です。
手数料率の相場はどのくらいですか?
公開されている公式情報は限られます。GetYourGuideは「成立した予約にのみ手数料がかかり、料率は国によって異なる」と公式に説明していますが、具体的な数字は登録後に提示される仕組みです。業界では体験系OTAで20〜30%前後、旅行会社・ランドオペレーター経由で10〜20%前後と語られることが多いものの、いずれも二次情報であり、取引量や商品で大きく変わります。自分の契約条件を必ず書面で確認してください。
NET価格を途中で上げたくなったら、どうすればいいですか?
原則として、提示した有効期間中は据え置きます。旅行会社はそのNETを前提にカタログを印刷し、旅行者に販売済みの場合もあるからです。どうしても変更が必要な場合は、次の有効期間(翌年度のタリフ)から反映させるのが通常の進め方です。原材料費の高騰など不可抗力の場合は、早めに事情を説明して相談しますが、一方的な通知は信頼を損ないます。最初のNET設定の段階で、1年分のコスト変動を織り込んでおくことが重要です。
関連する用語
出典・参考
- GetYourGuide「Become a GetYourGuide Supplier」 — 掲載無料・成立予約のみ手数料・料率は国により異なり登録後に提示、との公式説明
- 観光庁「訪日外国人の消費動向 インバウンド消費動向調査結果及び分析 2025年 年次報告書」 — 旅行手配方法別の支出構造(パッケージツアー参加費と個別手配の違い、p.17)
公開 2026.10.04 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。
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