Sales & Marketing

直販(ダイレクトブッキング)Direct Booking

読み: ちょくはん(だいれくとぶっきんぐ)別名: 直販・ダイレクトブッキング・自社予約・自社サイト予約・直接予約・D2C

旅行会社やOTA(オンライン旅行会社)を介さず、旅行者が事業者の自社サイト・電話・メール・SNSなどから直接予約し、事業者に代金を支払う販売の形。仲介の手数料がかからない代わりに、集客・予約対応・決済を自社で担う。

この用語の要点

  • インバウンドの販路は①旅行会社経由 ②OTA経由 ③自社直販の3ルート。直販は③にあたり、価格と顧客情報を自社で持てる
  • 観光庁の調査(2025年)では、訪日客の87.2%が航空券や宿泊を個別に手配している。一方、出発前に役立った情報源は「SNS」43.3%、「動画サイト」39.6%が上位で、「宿泊施設ホームページ」は11.1%
  • 自社サイトを作るだけでは見つけてもらえない。SNS・動画・口コミで見つけてもらい、予約を自社で受ける導線を作るのが直販の基本
  • 直販は手数料ゼロではない。決済手数料・予約システム費・集客の手間がかかる。OTAや旅行会社をやめる手段ではなく、組み合わせて使う販路
  • 自社サイトで予約・決済を受けるなら、特定商取引法の通信販売の表示、キャンセルポリシー、OTA・旅行会社向け価格との整合を事前に確認する

直販とは:3つの販路の一つ

直販(ちょくはん)は、旅行者が事業者から直接予約する販売の形です。英語ではダイレクトブッキング(Direct Booking)と呼ばれます。予約の入口は自社のウェブサイトだけでなく、電話・メール・InstagramなどのSNSのメッセージ、Googleマップに表示される予約リンクなども含みます。

ポイントは間に仲介業者が入らないことです。旅行会社やOTAを通すと、販売の対価として手数料(コミッション(販売手数料))がかかり、お客様の連絡先も仲介業者が持つことが多くなります。直販では、価格を自分で決め、お客様と直接やり取りし、代金を直接受け取ります。

その代わり、仲介業者が担っていた仕事——お客様に見つけてもらう、予約を受け付ける、決済する、変更や取消しに対応する——を、すべて自社で引き受けることになります。

商流の中での位置づけ

インバウンドの商流(3ルート)海外の旅行者が地域の事業者に届くまでの3つのルート。①海外の旅行会社→日本のランドオペレーター→事業者(NET価格で取引)、②旅行者→OTA→事業者(コミッション発生)、③旅行者→SNS・自社サイト→事業者(直販)。① 旅行会社経由団体・富裕層・オーダーメイド志向の個人旅行者海外の旅行会社取引はNET価格(卸値)日本のランドオペレーター② OTA経由自分で検索して予約する個人旅行者(FIT)海外の旅行者(FIT)予約ごとにコミッション(手数料)OTABooking.com・Viator・GetYourGuide など③ 自社直販若い世代・リピーター・SNSで見つける旅行者海外の旅行者(FIT)手数料は決済分のみSNS・自社サイト・メディア記事地域の観光事業者(宿泊・飲食・体験・物販)ポイント・ターゲットによって使う商流が変わる。欧米豪の富裕層・家族連れは①、アジア圏や若い世代の個人旅行者は②③が中心・訪日旅行者の約9割は個別手配(観光庁 インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書)。それでも①を外せないのは1人あたり消費額が大きいため・「OTAだけで十分」と決めず、①と②③の両方の入口を用意するのが基本
インバウンドの商流(3ルート)。直販は③のルート。2026-08-10 Kachisai定例会セミナーの図を再作成

インバウンドの販路は、大きく3つに分かれます。

ルート流れ主なお客様
①旅行会社経由海外の旅行会社 → ランドオペレーター → 地域の事業者団体、富裕層、オーダーメイドを望む個人旅行者
②OTA経由旅行者 → OTA(オンライン旅行会社) → 地域の事業者自分で検索して予約する個人旅行者(FIT)
③自社直販旅行者 → SNS・自社サイト・メディア記事 → 地域の事業者若い世代、自分で調べて動く個人旅行者、リピーター

観光庁のインバウンド消費動向調査(2025年年次報告書)では、旅行の手配方法は「個別手配」が87.2%を占めます。多くの旅行者が自分で調べて予約しているので、直販に届く可能性は十分にあります。

ただし、同じ調査で出発前に役に立った旅行情報源を見ると、上位は「SNS」43.3%、「動画サイト」39.6%、「個人のブログ」23.9%で、「宿泊施設ホームページ」は11.1%、「口コミサイト」は11.0%でした(複数回答)。旅行者は事業者の公式サイトから情報を探し始めるわけではありません。SNSや動画で見つけてもらい、そこから自社の予約ページに来てもらうという流れを作れるかどうかが、直販の成否を分けます。

OTA・旅行会社との使い分け

直販・OTA・旅行会社は、どれか一つを選ぶものではありません。それぞれ得意なことが違います。

比べる点①旅行会社経由②OTA③直販
見つけてもらう力旅行会社の顧客に届く検索する旅行者に届きやすい自社の発信次第
手数料NETとGROSSの差販売額に対する手数料決済手数料・システム費など
価格の自由度1年単位で固定が基本ある程度調整できる最も自由
お客様の情報旅行会社が持つOTAが持つことが多い自社で持てる
手間商談・タリフ作成掲載ページの整備集客から決済・対応まで全部
OTAの手数料がもったいないので、全部自社サイトの予約に切り替えたい。

よくある発想ですが、OTAをやめると、まだ自社を知らない旅行者に見つけてもらう入口がなくなります。現実的なのは、初めてのお客様はOTAや旅行会社経由で出会い、満足したお客様の紹介やリピート、SNSを見た人を直販で受けるという分担です。観光庁の同調査では、訪日客のうち日本への来訪が「1回目」の人は35.1%で、残りは2回目以上の来訪でした。一度来た人に直接つながっておく価値は小さくありません。

直販を始めるための実務

予約の受け方を決める

  • 予約システム(予約管理サービス): 空き状況の表示、予約受付、オンライン決済、確認メールの自動送信をまとめて行える。選ぶときは、英語など多言語の画面、海外カードでの決済、OTAとの在庫連動、キャンセル規定の設定ができるかを確認する
  • メール・SNSでの受付: 件数が少ないうちは可能だが、ダブルブッキングと返信の遅れが起きやすい

見つけてもらう入口を作る

  • Googleビジネスプロフィールでは、観光スポットやツアー会社がチケット・アクティビティの情報を登録でき、チケット名(アクティビティ名)と予約URLが必須項目になっている。旅行者は表示から事業者のサイトに移って直接予約できる
  • SNSのプロフィールと各投稿から、予約ページに1クリックで行けるようにしておく

表示と規約を整える

  • 自社サイトで予約・決済を受ける場合、特定商取引法の「通信販売」にあたり、価格、支払時期と方法、役務の提供時期、申込みの撤回・解除に関する事項、事業者の名称・住所・電話番号などの表示が求められる。項目は消費者庁の特定商取引法ガイドで確認する
  • 取消料と返金のルールをキャンセルポリシーとして予約前に見える場所に書く
  • 自分の施設や体験を自分で売るだけなら原則として旅行業の登録は不要だが、他社の宿泊や交通を組み合わせて売る場合は登録が必要になることがある(旅行業法と旅行業登録)。迷ったら都道府県の旅行業担当課に確認する

計算例と、現場で起きやすい失敗

手残りの比べ方(仮定の数字)

販売価格10,000円の体験を例に、仮に次の条件で比べます。実際の手数料率は契約先ごとに確認してください。

販路差し引かれるもの(仮定)手残り
OTA販売手数料20%8,000円
直販決済手数料3.6%+予約システム費(月額を件数で割って1件300円)9,340円

差は1件1,340円ですが、直販には表に出ない費用があります。SNS投稿や写真撮影の時間、問い合わせへの返信、広告を出すならその費用です。直販の比率を上げる価値があるかは、この手間を含めて判断します。

起きやすい失敗

  • 直販価格を旅行会社向けのNET価格より安くする: 旅行会社の販売価格より安く一般に売られていると分かれば、取引が止まる原因になる(関係はNET価格・GROSS価格)。直販で割引をするなら、価格そのものより特典や時期限定で工夫する
  • 販路ごとに在庫を手で管理してダブルブッキング: OTAと直販で同じ枠を売っている場合は、在庫連動か、販路ごとの枠の割り当てを決めておく
  • 予約ページが日本語だけ: 海外の旅行者がSNSから来ても、英語の説明と決済ができなければ予約に至らない

よくある質問

自社サイトで予約を受けるのに、旅行業の登録は必要ですか?

自分の施設や体験を自分で提供して販売するだけなら、原則として旅行業の登録は不要です。ただし、他社の宿泊や交通を組み合わせて一つの商品として販売する場合は、登録が必要になることがあります。判断に迷う場合は、都道府県の旅行業担当課や観光庁に確認してください。

直販の価格を、OTAより安くしてもよいですか?

OTAの掲載条件で価格の扱いが定められている場合があるため、まず掲載先の規約を確認してください。また、旅行会社に渡しているNET価格より安く一般に売ると、旅行会社との取引に影響します。値下げより、直販限定の特典や時期限定のプランで差をつけるほうが摩擦を避けられます。

予約システムは、何を基準に選べばよいですか?

インバウンド向けなら、英語など多言語の予約画面、海外発行のカードでの決済、OTAとの在庫連動、キャンセル規定の設定ができるかが主な基準です。料金体系は月額固定か予約ごとの手数料かで負担が変わるため、自社の予約件数で試算してから選ぶと失敗が少なくなります。

Googleマップの表示から、自社サイトで直接予約を受けられますか?

Googleビジネスプロフィールでは、観光スポットやツアー会社がチケットやアクティビティの情報を登録でき、チケット名(アクティビティ名)と予約URLが必須項目です。旅行者は表示から事業者のサイトに移って直接予約できます。掲載にはGoogleのポリシーに沿う必要があるため、ヘルプページで条件を確認してください。

出典・参考

  1. 観光庁「訪日外国人の消費動向 インバウンド消費動向調査結果及び分析 2025年 年次報告書」 — 旅行手配方法: 個別手配87.2%(p.5)/来訪回数: 1回目35.1%(p.3)/出発前に役立った旅行情報源: SNS43.3%・動画サイト39.6%・個人のブログ23.9%・宿泊施設ホームページ11.1%・口コミサイト11.0%(p.23)
  2. Google ビジネス プロフィール ヘルプ「チケットやアクティビティの詳細を管理する」 — 観光スポット・ツアー会社が対象、チケット名またはアクティビティ名と予約URLが必須項目、ウェブサイトから直接購入・予約できる旨
  3. 消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売」 — 通信販売の定義(役務の提供を含む)と広告に表示すべき事項

公開 2026.10.16 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。

言葉の意味は分かった。次は、自分の事業で使えるようにしたい方へ。

Kachisaiは、地域の観光事業者が集まり、コンテンツづくりから旅行会社・OTAとの取引まで、専門家と仲間と一緒に手を動かすコミュニティです。毎週日曜20時にオンラインで無料説明会を開いています。

用語集の一覧へ →