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SIT(特別な関心を持つ旅行)Special Interest Tour
Special Interest Tour(Travel/Tourism)の略。名所を広く巡る観光ではなく、酒造り・工芸・歴史・自然観察・スポーツなど、旅行者が持つ特定の関心やテーマを主な目的として行う旅行、またはその商品。
この用語の要点
- SITは旅行の「目的」による区分。手配の「形」による区分であるFIT(個人旅行)・GIT(団体旅行)とは軸が違い、FITかつSITという旅行者も多い
- 観光庁・JNTOによる統一的な定義は確認できず、旅行業界で使われる区分。資料や相手によって指す範囲が違うので、最初に確認する
- 観光庁の調査(2025年)では、「自然体験ツアー・農山漁村体験」をしたのは8.7%だが、次回したい人は20.4%。「四季の体感」も16.9%に対し30.7%と、次回の意向が今回の実施を上回る
- 目的がはっきりした旅行者は、移動の手間をかけても目当ての場所に来る。名所が少ない地域でも、テーマ次第で選ばれる余地がある
- 商品にするには、テーマを1つに絞り、誰が案内し何がどこまで分かるのかを言葉にする。届け先はテーマに強い旅行会社・ランドオペレーター・専門メディア
SITとは:「どこへ」より「何のために」の旅
SIT(エス・アイ・ティー)は、Special Interest Tour(またはTravel、Tourism)の略です。日本語では「特別な関心を持つ旅行」「テーマ型の旅行」と訳されます。
一般的な周遊観光が「有名な場所を広く回る」旅だとすれば、SITは「特定の関心を満たすために、その場所へ行く」旅です。たとえば次のようなテーマがあります。
- 酒蔵を巡って仕込みや杜氏の話を聞く
- 陶芸・染織・漆などの工房で、職人の仕事を見て体験する
- 巡礼路や古道を数日かけて歩く
- 野鳥・植物・星空を観察する
- 庭園、寺社建築、城郭を専門的に見て回る
- 鉄道、アニメの舞台、スポーツ観戦を目当てに訪れる
なお、SITという言葉に観光庁やJNTOによる統一的な定義は確認できませんでした。旅行業界で使われる区分で、資料によって範囲が違います。アドベンチャーツーリズムやガストロノミーツーリズムのように、テーマごとに名前がついて国の施策になっているものもあります。
データで見る:旅行者が「次にしたいこと」
観光庁のインバウンド消費動向調査(2025年年次報告書)は、訪日外国人に「今回したこと」と「次回したいこと」を尋ねています(全国籍・地域、複数回答)。テーマ型の体験に関わる項目を抜き出すと、次のとおりです。
| 項目 | 今回したこと | 次回したいこと |
|---|---|---|
| 日本の酒を飲むこと | 48.6% | 31.8% |
| 温泉入浴 | 27.0% | 51.4% |
| 日本の歴史・伝統文化体験 | 32.7% | 29.3% |
| 日本の日常生活体験 | 28.2% | 26.9% |
| 四季の体感 | 16.9% | 30.7% |
| 自然体験ツアー・農山漁村体験 | 8.7% | 20.4% |
| 映画・アニメ縁の地を訪問 | 8.3% | 14.0% |
| スキー・スノーボード | 2.9% | 17.9% |
注目したいのは、「次回したいこと」が「今回したこと」を大きく上回る項目です。温泉、四季の体感、自然体験・農山漁村体験、スキーなどは、関心はあるのに今回の旅では実現できなかった人が多いと読めます。
また、同調査で「満足した」と答えた人の割合は、「日本の日常生活体験」97.2%、「自然体験ツアー・農山漁村体験」96.3%と高い水準でした。体験した人の満足度が高く、まだ実施した人が少ないテーマは、地域の事業者にとって入り込む余地がある分野です。
なぜ地域の小さな事業者に関係があるのか
SITの旅行者は、目的がはっきりしています。そのため、次のような特徴が地方の事業者に有利に働きます。
- 移動の手間を惜しまない。 目当ての酒蔵や工房があれば、乗り換えが多くても来ます。有名な観光地がない地域でも、テーマがあれば目的地になれます。
- 少人数で深い体験を求める。 大型バスを受け入れる設備より、話をしてくれる職人や案内人のほうが価値を持ちます。小さな事業者の規模がそのまま強みになります。
- 価格より中身で選ぶ傾向がある。 何が見られて、誰から何を聞けるのかがはっきりしていれば、価格だけで比べられにくくなります。
うちの体験はマニアックすぎて、お客さんが来ないのではないか。
そう考える方もいるかもしれませんが、SITの考え方では逆です。万人向けに薄めた体験より、関心のある人が「これを探していた」と思える体験のほうが、遠くから人を呼べます。 課題になるのは、その「探している人」に情報が届いているかどうかです。
SITの商品にするための実務
テーマを1つに絞り、深さを言葉にする
「酒蔵見学」ではSITの旅行者には伝わりません。何が見られて、誰が案内し、どこまで分かるのかを具体的に書きます。
- 案内する人(杜氏、職人、研究者、長年の愛好家など)
- 見られる工程や場所(一般には公開していない場所かどうか)
- 時期による違い(仕込みの季節、渡り鳥の時期など)
- 参加の条件(人数の上限、所要時間、歩く距離、必要な体力や装備)
専門用語の通訳を準備する
SITの旅行者は専門知識を持っていることが多く、通訳が専門用語を訳せないと満足度が下がります。テーマの用語集を英語で作っておく、テーマに詳しい通訳案内士に依頼するなどの準備が要ります。
テーマに強い相手に届ける
- 旅行会社・ランドオペレーターの中には、食・工芸・自然観察など特定のテーマに強い会社がある。プロダクトシート(商品提案書)とタリフ(料金表)を用意して、そうした会社に絞って提案する
- テーマ専門のメディアや愛好家のコミュニティ、SNSで発信する
- 近隣の事業者と組み、同じテーマで1日〜数日の行程にする(酒蔵+酒米の田んぼ+酒に合う料理など)
よくある失敗と、似た言葉との違い
よくある失敗
- テーマを欲張る: 酒も陶芸も自然もと並べると、どの関心層にも刺さらない
- 中身が一般向けのまま: 専門的な関心を持つ人に、初心者向けの説明だけで終わる
- 移動手段を考えていない: 酒蔵巡りでは運転ができない。駅や宿からの二次交通を手配できるかを先に確認する
似た言葉との違い
FIT(FIT)は、旅行会社のパッケージを使わず自分で手配する個人旅行者のこと。手配の「形」による区分です。SITは旅行の「目的」による区分なので、自分で手配してテーマを目的に旅する「FITかつSIT」の旅行者は珍しくありません。
GIT(団体旅行)でも、同じ関心を持つ人が集まる愛好会や専門家の視察のように、SITの団体はあります。
アドベンチャーツーリズム、ガストロノミーツーリズムは、テーマが決まっている旅行形態で、SITの中の代表的な分野と考えると整理しやすくなります。
よくある質問
SITとFITは、何が違いますか?
FITは旅行会社のパッケージを使わず、自分で手配する個人旅行者という「手配の形」による区分です。SITは酒造りや工芸など特定のテーマを目的にした旅行という「目的」による区分です。軸が違うので、自分で手配してテーマを目的に旅する、FITかつSITの旅行者も多くいます。
SITに公式な定義はありますか?
観光庁やJNTOによる統一的な定義は確認できませんでした。旅行業界でSpecial Interest TourまたはTravel、Tourismの略として使われる区分で、資料や会社によって指す範囲が違います。商談で使うときは、相手がどんなテーマの旅行を想定しているかを最初に確認すると話が噛み合います。
どんな体験なら、SITの商品になりますか?
特定の関心を持つ人が、わざわざそのために来たいと思える専門性や希少性があるかが目安です。一般公開していない工程が見られる、その道の担い手から直接話を聞ける、その季節・その場所でしか見られないといった要素があると、テーマとして成り立ちやすくなります。
小さな事業者が、SITの旅行者に情報を届けるにはどうすればよいですか?
テーマに強い旅行会社やランドオペレーターに絞ってプロダクトシートとタリフを渡す方法と、テーマ専門のメディアや愛好家のコミュニティ、SNSで発信する方法があります。広く告知するより、関心を持つ人が集まる場所に深い情報を出すほうが効果的です。
関連する用語
出典・参考
- 観光庁「訪日外国人の消費動向 インバウンド消費動向調査結果及び分析 2025年 年次報告書」 — 図表6-1 今回したことと次回したいこと、図表6-2 今回した人のうち満足した人の割合(いずれも全国籍・地域、複数回答、p.24)
公開 2026.10.16 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。
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