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カスタマージャーニー(旅マエ・旅ナカ・旅アト)Customer Journey
旅行者が旅行先を選び(旅マエ)、現地で過ごし(旅ナカ)、帰国後に振り返る(旅アト)までの一連の流れを、段階ごとの行動・情報源・意思決定で整理する考え方。マーケティングでいうカスタマージャーニーの観光版。
この用語の要点
- 旅マエ=出発前の情報収集と予約、旅ナカ=滞在中、旅アト=帰国後。旅マエの前に「どの国に行くか」を決める段階を分けて「プレ旅マエ」と呼ぶこともある
- 2025年の観光庁調査では、訪日客が出発前に役に立った情報源はSNS 43.3%、動画サイト 39.6%、個人のブログ 23.9%の順
- 滞在中に役に立った情報は交通手段 65.9%、飲食店 56.0%、観光施設 39.1%。旅ナカは「今日どう動くか」の情報が求められる
- 日本への再訪意向は「必ず来たい」77.9%。旅アトの体験談が次の旅行者の旅マエの情報源になり、リピーターの再訪にもつながる
- 段階によって届け先と販路が変わる。旅行会社向けの商品は旅マエのかなり早い時期、当日予約向けの商品は旅ナカの販路で売る
旅マエ・旅ナカ・旅アトとは
旅行者の行動を「いつ」で区切る考え方です。
- 旅マエ(旅前): 行き先を決め、情報を集め、宿や体験を予約する段階
- 旅ナカ(旅中): 現地に滞在している段階。その日の行き先や食事をその場で決める
- 旅アト(旅後): 帰国・帰宅した後。写真や口コミを投稿し、思い出を振り返る
国土交通省中部運輸局がDMO向けにまとめた『訪日外国人旅行者向け 観光コンテンツ販路構築の手引き』では、旅マエの前に「どの国に行こうか決める期間」をプレ旅マエとして分け、4つの段階で情報の届け方を整理しています。同書が示す目安では、プレ旅マエは旅行出発の4か月以上前、旅マエは1〜3か月以上前、旅ナカは5〜10日間、旅アトは旅行後1か月程度とされています。
同書は「多くの訪日外国人は、日本に来る何ヵ月も前から情報収集や予約を始めている」とし、段階ごとに必要な情報も、それを得る手段も違うと指摘しています。事業者にとっては、「誰に」「いつ」「何を」見せるかを段階ごとに分けて考えるための地図になります。
訪日客は各段階で何を頼りにしているか
観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年年次報告書から、全国籍・地域の複数回答の結果を見ます。
旅マエ:出発前に役に立った情報源
| 情報源 | 割合 |
|---|---|
| SNS | 43.3% |
| 動画サイト | 39.6% |
| 個人のブログ | 23.9% |
| 自国の親族・知人 | 19.9% |
| 日本政府観光局ホームページ | 12.2% |
| 宿泊施設ホームページ | 11.1% |
| 口コミサイト | 11.0% |
| 宿泊予約サイト | 10.5% |
| 地方観光協会ホームページ | 4.9% |
旅ナカ:日本滞在中に役に立った旅行情報
| 情報 | 割合 |
|---|---|
| 交通手段 | 65.9% |
| 飲食店 | 56.0% |
| 観光施設 | 39.1% |
| 宿泊施設 | 38.0% |
| 買物場所 | 33.8% |
旅マエは、旅行者本人や知人が発信した写真・動画・体験談が強い入口になっています。一方、旅ナカで求められているのは「どうやって行くか」「どこで食べるか」という、その日の行動に直結する情報です。同じ体験でも、旅マエでは魅力を、旅ナカでは行き方と当日空きを伝える、という使い分けが必要になります。
旅マエ:予約の入口は3つある
旅マエでの予約には、大きく3つの入口があります。どこから予約が入るかで、情報を届けるタイミングが変わります。
- 旅行会社・ランドオペレーター経由: ツアーの企画は旅行者が動き出すよりずっと前に始まります。中部運輸局の手引きでも、海外旅行会社は国や地域によって1年以上前から商品企画や販売を始める会社もあるとしています。タリフやプロダクトシートは、シーズンの1年前には渡せる状態にしておきます
- OTA経由: 旅行者が日程を決めた後、数週間〜数日前に検索して予約します。写真・口コミ・所要時間・集合場所の分かりやすさが比較のポイントです
- 自社サイト・SNS経由: 旅行者がSNSや動画で見つけ、名前で検索してたどり着きます。発信の積み重ねが、後で予約になります
SNSを頑張っているのに、予約がOTAからばかり入るのはなぜでしょう。
こうした声はよく聞きますが、旅マエの前半でSNSを見て興味を持ち、後半で使い慣れたOTAから予約する、という動き方はごく自然です。SNSが予約に効いていないのではなく、SNSが入口、OTAが決済窓口として分担している場合があります。
旅ナカ:その場で決める旅行者に届ける
旅ナカの旅行者は、空いた時間に「近くで何かできないか」を探します。中部運輸局の手引きは、旅ナカの販路として観光案内所とホテルのコンシェルジュを挙げ、当日でも受け付けられるコンテンツや、本格的な体験を簡略化したライトバージョンを用意することが重要だとしています。
事業者ができることは次のとおりです。
- 近隣の宿泊施設のフロントと観光案内所に、当日予約の可否・最短所要時間・連絡方法を書いた一枚を置いてもらう
- Googleマップなどの地図上の情報(営業時間・場所・写真)を正確にしておく。旅ナカで最も求められるのは交通手段と飲食店の情報で、旅行者は地図から探す
- 予約済みのお客様には、前日か当日に集合場所の写真と行き方を送る
旅ナカの満足度は、体験そのものだけでなく「迷わずたどり着けたか」でも決まります。
旅アト:次の旅行者の旅マエをつくる
旅アトの行動は、そのまま別の旅行者の旅マエの情報源になります。出発前の情報源の上位がSNS・動画・ブログ・知人だったことを思い出すと、満足したお客様の投稿は、事業者が自分で出す広告よりも届きやすい情報だと言えます。
2025年の観光庁調査では、日本への再訪意向は「必ず来たい」が77.9%、「来たい」が19.2%でした。同じ調査の「次回日本を訪れたときにしたいこと」では、今回実施した割合より次回したい割合のほうが高い項目として、温泉入浴(今回27.0%→次回51.4%)、自然体験ツアー・農山漁村体験(8.7%→20.4%)、四季の体感(16.9%→30.7%)などが挙がっています。
旅アトでできることは、次の3つです。
- 体験の終わりに、口コミ投稿のお願いと、投稿先(OTAのレビュー、Googleマップ等)を一言で伝える
- タグ付けしやすいアカウント名やハッシュタグを、案内の紙に書いておく
- 季節を変えて来たくなる情報(別の季節の写真、近隣の温泉など)を、お礼のメッセージに添える
よくある誤解
「旅マエ=広告、旅ナカ=看板」ではありません。 段階は媒体の種類ではなく、旅行者の状態で決まります。同じInstagramでも、出発前に見れば旅マエ、滞在中に近くの店を探すときに見れば旅ナカの情報源です。
全部の段階に同じ力を入れる必要はありません。 当日予約を受けられない体験なら旅ナカへの投資は小さくし、旅マエの販路(旅行会社・OTA)に集中するほうが合理的です。逆に、短時間で予約なしでも参加できる体験は、旅ナカの販路が主戦場になります。自分の商品の所要時間・予約の締め切り・価格帯から、どの段階で売る商品なのかを先に決めると、やることが絞れます。
よくある質問
旅マエの情報発信は、出発のどれくらい前から始めればよいですか?
販路によって変わります。中部運輸局の手引きが示す目安では、旅マエは出発の1〜3か月以上前、行き先の国を決めるプレ旅マエは4か月以上前です。旅行会社向けの商品はさらに早く、1年以上前から企画が始まることもあるため、シーズンの1年前には資料をそろえておくと間に合います。
旅ナカの集客で、小さな事業者がまずやるべきことは何ですか?
近くの宿泊施設のフロントや観光案内所に、当日予約の可否と連絡方法を伝えておくことと、地図サービス上の営業時間・場所・写真を正確にしておくことです。旅ナカの旅行者は交通手段や飲食店の情報を最も頼りにしており、地図から近くの選択肢を探すことが多いためです。
旅アトの口コミを増やすには、どうすればよいですか?
体験の終わりに、どこに投稿してほしいかを具体的に伝えるのが基本です。OTAのレビュー画面やGoogleマップの場所を案内の紙やメッセージで示すと、投稿の手間が減ります。口コミと引き換えに割引や特典を出す方法は、OTAや各サービスの規約で禁止されている場合があるため、規約を確認してから行ってください。
カスタマージャーニーマップは作ったほうがよいですか?
立派な図にする必要はありませんが、段階ごとに「旅行者は何を探しているか」「自分はどこで何を見せるか」を一枚の表に書き出すと、手が回っていない段階が見えます。旅マエ・旅ナカ・旅アトの3列に、販路・情報・担当を書くだけでも十分に役立ちます。
関連する用語
出典・参考
- 国土交通省中部運輸局「訪日外国人旅行者向け 観光コンテンツ販路構築の手引き」 — 「旅ナカ」の販路(観光案内所・ホテルコンシェルジュ)p.8・p.28、海外旅行会社のリードタイム p.12、訪日プロモーションのタイミング(プレ旅マエ・旅マエ・旅ナカ・旅アトの期間と接触媒体。表の出典は訪日ラボと明記)p.42
- 観光庁「訪日外国人の消費動向 インバウンド消費動向調査結果及び分析 2025年 年次報告書」 — 再訪意向(必ず来たい77.9%・来たい19.2%)p.21、出発前に役に立った旅行情報源・日本滞在中に役に立った旅行情報 p.23、今回したことと次回したいこと p.24
公開 2026.10.19 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。
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