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多言語対応Multilingual Support
外国人旅行者が言葉の壁で行動を諦めないよう、予約ページ・メニュー・館内案内・注意書き・接客などを外国語でも理解できる状態にすること。翻訳だけでなく、ピクトグラムや翻訳ツールの活用、表記ルールの統一も含む。
この用語の要点
- 観光庁の令和7年度調査では「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」で困った旅行者は10.9%。地方部だけを訪れた人では、困った場所の1位が飲食店(23%)だった
- 困った内容の最多は「多言語対応されていない/表示言語数が不足」(67%)。次いで「記載量が原文より少ない」「誤訳」が続く
- 翻訳の優先順位は、お金と予約が動く場所(予約導線・料金・キャンセル規定)→ 注文と安全(メニュー・アレルギー・注意書き)→ 館内の案内、の順に考えると無駄が少ない
- 観光庁のガイドラインは英語を基本とし、施設や地域の特性に応じて中国語・韓国語などを加える考え方を示している
- 機械翻訳は下訳と接客の補助に向く。料金・規約・アレルギーなど誤訳が損害につながる箇所は、人の確認を入れる
多言語対応とは:翻訳より「行動できるかどうか」
多言語対応というと「看板やパンフレットを英語にすること」と思われがちですが、旅行者の側から見ると目的はもっと単純です。予約できるか、注文できるか、迷わず移動できるか、危険を避けられるか。言葉が理由でこれらを諦めさせない状態をつくることが多言語対応です。
そのため、手段は翻訳だけではありません。写真付きのメニュー、ピクトグラム(絵文字による案内)、指差しで使える会話シート、スタッフ側の翻訳アプリ、QRコードから開く多言語ページなども、すべて多言語対応の一部です。
観光庁が2014年(平成26年)3月に策定した「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」も、ピクトグラムの活用や、パンフレット・モバイル媒体・口頭案内などとの相互補完を有効な方法として挙げています。
旅行者は実際にどこで困っているか
観光庁の令和7年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」(主要5空港で出国前の旅行者4,110人に対面調査)では、旅行中に困ったことの上位に言葉の問題が2つ入っています。
| 困ったこと | 割合(令和7年度) |
|---|---|
| 施設等のスタッフとのコミュニケーション(英語が通じない等) | 15.4%(2位) |
| 多言語表示の少なさ・わかりにくさ | 10.9%(5位) |
困った場所を見ると、地方の事業者にとって無視できない結果が出ています。多言語表示で困った場所は、都市部だけを訪れた人では「鉄道駅構内」が30%で最多でしたが、地方部だけを訪れた人では「飲食店」が23%で最多でした。スタッフとのコミュニケーションで困った場所も、全体で「飲食店」が38%で1位です。
困った内容は「多言語対応されていない/表示言語数が不足している」が67%で最も多く、次いで「記載量が原文と比較して少ない」24%、「誤訳があった」20%でした。「英語版はあるけれど、日本語版より情報が少ない」状態も不満の原因になるということです。
一方で、困ったときの対応は「自動翻訳システムや翻訳アプリ等のICTツールを利用して解読した」が57%でした。旅行者自身が翻訳アプリを使い慣れている前提で、それでも読み取れない部分をどう埋めるかを考えるのが現実的です。
何から翻訳するか:優先順位の考え方
予算も時間も限られる中で、館内の全掲示を一度に多言語化するのは現実的ではありません。次の順番で考えると、手間に対して効果が大きくなります。
- 予約と支払いの導線: 予約ページ、料金、含まれるもの・含まれないもの、キャンセルポリシー、集合場所。ここが読めないと予約そのものが発生しません。旅行会社やOTAに渡すプロダクトシート(商品提案書)(商品提案書)の英語版もこの段階に入ります
- 注文と安全: メニュー(料理名だけでなく食材と調理法)、アレルギー・宗教上の食事制限への対応可否、危険箇所や禁止事項の注意書き、緊急時の連絡先
- 館内・現地の案内: トイレ・浴場の使い方、Wi-Fi、チェックアウト、周辺の交通
- 魅力の解説: 歴史や文化の背景、体験の意味。ここは機械翻訳では伝わりにくく、時間をかけて作る価値がある部分です
1と2は誤りがそのまま損害やトラブルにつながる情報なので、最初に正確さを確保します。食事制限の伝え方は食の多様性対応(アレルギー・宗教食)で詳しく扱っています。
機械翻訳の使いどころと、表記のルール
機械翻訳が向いているところ
- 下訳(最初のたたき台)を作る
- 接客の場での短いやり取り(スタッフ側の翻訳アプリ)
- 頻繁に変わる情報(本日のおすすめ、臨時休業のお知らせ)
人の確認を入れたいところ
- 料金、キャンセル規定、利用規約などお金と契約に関わる文章
- アレルギーや食材の表示
- 地名・施設名などの固有名詞(翻訳エンジンが勝手に意訳することがある)
表記の基本ルール
観光庁のガイドラインは、使用言語は英語を基本とし、施設特性や地域特性から必要性が高い場合に中国語・韓国語などを加える考え方を示しています。英語の表記では「固有名詞はローマ字+普通名詞は英語」(例: 日比谷公園 → Hibiya Park)を基本に、「清水寺 → Kiyomizu-dera Temple」のように固有名詞と一体の場合や、「温泉 → Onsen」のように日本語の読みが広く知られている場合の扱いも示されています。
同じ施設名をページごとに違う綴りで書くと、旅行者は別の場所だと思って迷います。調査でも「固有名詞等の表記が統一されていない」が困りごとに挙がっています。表記の一覧表を一枚作って、パンフレットもサイトも看板もそれに合わせるだけで、品質は大きく上がります。
現場でよくある失敗と誤解
英語のメニューは作ったのに、注文のときに結局身振りになる。何が足りないのか。
こうした相談では、メニューに「料理名の英訳」しか書かれていないことがよくあります。旅行者が知りたいのは名前より中身です。主な食材、肉の種類、辛さ、量、アルコールの有無を写真と一緒に載せると、指差しで注文が完結します。
「英語さえあれば十分」という誤解。 観光白書(令和8年版)によれば、2025年の訪日外国人旅行者の内訳は韓国・中国・台湾など東アジアが大きな割合を占めます。どの言語を足すかは、自分の施設に実際に来ている国・地域を予約データで確認してから決めるのが確実です。
「全部を翻訳しないと意味がない」という誤解。 調査では困った内容に「記載量が少ない」も挙がっていますが、だからといって全掲示を訳す必要はありません。予約・注文・安全に関わる情報を日本語版と同じ量で揃え、それ以外は翻訳アプリに任せる、という線引きが現実的です。
補助金を使って多言語化を進める地域もありますが、国や自治体の支援メニューは年度ごとに変わります。観光庁の公募情報や、都道府県・市町村の観光担当課で最新の募集要項を確認してください。
よくある質問
多言語対応は、まず何語から始めればいいですか?
観光庁のガイドラインは英語を基本としています。英語は多くの国の旅行者が読めるため、最初の一言語として効率が良いからです。そのうえで、予約データや宿帳から自分の施設に来ている国・地域を確認し、来訪の多い言語(例えば中国語の簡体字・繁体字、韓国語など)を追加していくのが無駄のない順番です。
機械翻訳(自動翻訳)だけで多言語化しても問題ありませんか?
案内や短い説明には実用的ですが、料金・キャンセル規定・アレルギー表示など、誤訳がトラブルや健康被害につながる箇所は、外国語が分かる人の確認を入れることをおすすめします。固有名詞が意訳されてしまうこともあるため、施設名や地名は表記一覧を作って統一してください。
メニューを多言語化するとき、何を書けばいいですか?
料理名の訳だけでなく、主な食材、肉の種類、アルコールや出汁の使用、辛さ、量の目安を書き、写真を添えるのが効果的です。宗教上やアレルギーで食べられないものがある旅行者は、名前ではなく中身で判断するためです。対応できない食事制限がある場合は、それも明記しておくと現場の確認が減ります。
多言語化に使える補助金はありますか?
国・都道府県・市町村が受入環境整備の一環として支援事業を行うことがありますが、名称・対象・補助率・募集時期は年度ごとに変わります。観光庁の公募情報ページや、地域の観光担当課、DMO・観光協会に最新の募集状況を確認してください。申請前に着手した経費は対象外になる場合がある点にも注意が必要です。
関連する用語
出典・参考
- 観光庁「令和7年度『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート』調査結果」(令和8年4月) — 調査概要(5空港・4,110件)p.1/困ったこと上位(スタッフとのコミュニケーション15.4%、多言語表示10.9%)p.4-5/多言語表示で困った場所(地方部のみ訪問者は飲食店23%)・内容(未対応・言語数不足67%、記載量24%、誤訳20%、固有名詞不統一9%)・対処(ICTツール57%)p.20-22/コミュニケーションで困った場所(飲食店38%)p.13
- 観光庁「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」概要 — 平成26年3月策定。使用言語は英語を基本、必要に応じ中国語・韓国語等/ピクトグラム・パンフレット等との相互補完/英語の表記方法(日比谷公園 Hibiya Park、清水寺 Kiyomizu-dera Temple、温泉 Onsen 等)
- 観光庁「観光地域における案内表示等の充実」 — ガイドライン本体・概要版への掲載ページ、地域観光資源の多言語解説整備支援事業へのリンク
- 観光庁「令和8年版観光白書について(概要版)」 — 2025年の訪日外国人旅行者数4,268万人と国・地域別内訳(韓国・中国・台湾等の構成比)p.4
公開 2026.10.18 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。
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