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農泊Farm Stay
農山漁村に宿泊し、滞在中に地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ「農山漁村滞在型旅行」(農林水産省の定義)。宿の種類ではなく旅のかたちを指し、地域協議会を軸に地域ぐるみで取り組む点が特徴。
この用語の要点
- 農泊は「宿の許可の種類」ではなく「旅のかたち」。泊まる場所は農家民宿・古民家の一棟貸し・旅館など様々
- 農林水産省の資料では、農泊地域は全国656地域(令和5年度末)。農泊地域の年間延べ宿泊者数は令和5年度に794.2万人泊(うちインバウンド38.7万人泊)
- 同資料では農泊地域の平均宿泊費は12,904円で、観光全体の15,140円より安く、高付加価値化が課題とされている
- 国の支援(農山漁村振興交付金の農泊推進型)は、地域協議会や中核法人を通じた地域ぐるみの取組が前提。令和7年度の資料では、農家民泊等の経営者が単独で申請することは不可とされている
- 民泊(住宅宿泊事業法など)は宿泊サービスの法的な類型の話で、農泊とは切り口が違う
農泊とは何か
農林水産省は、農泊を「農山漁村に宿泊し、滞在中に豊かな地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ『農山漁村滞在型旅行』」と定義しています。
ポイントは、農泊は宿の種類ではなく、旅のかたちを表す言葉だということです。農林水産省の資料では、農泊のコンテンツとして、郷土料理やジビエなどの「食」、農作業体験・棚田の景観・サイクリング・地域文化などの「体験」、古民家の一棟貸し・農家民宿・廃校を活用したホテルなどの「宿泊」が並んでいます。つまり、泊まる場所が旅館でも古民家でも、地域の食と体験を組み合わせた滞在であれば農泊の考え方に入ります。
漁村での滞在型旅行は、水産庁が「渚泊(なぎさはく)」と呼んで推進しています。
国が農泊を進める理由と、現状の数字
農林水産省は、農泊の狙いを「農山漁村への長時間の滞在と消費」を促し、地域に「しごと」をつくって持続的な収益と雇用を生み出すこと、さらに移住・定住も見据えた関係人口の入口にすることだと説明しています。
同省の資料では、この考え方を次のように対比しています。
- 立ち寄るだけ(通過型観光): 直売所や飲食店に寄っても、宿泊は都市部のホテル。地域に落ちるお金は限定的
- 宿泊・体験が充実(滞在型観光): 直売所・飲食店に加えて、宿泊施設や農業体験・自然体験にもお金が落ちる
現状の数字は、農林水産省「農泊をめぐる状況について」(令和7年1月10日時点)で確認できます。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 農泊地域数(令和5年度末) | 全国656地域 |
| 農泊地域の年間延べ宿泊者数(令和5年度) | 794.2万人泊(国内755.5万・インバウンド38.7万) |
| 農泊地域の平均宿泊費(令和5年度) | 12,904円/人泊 |
| 観光全体の平均宿泊費(比較) | 15,140円/人泊 |
令和7年度までに700万人泊という目標は、令和5年度時点で達成しています。一方で、平均宿泊費が観光全体より安いことから、同資料は農泊の高付加価値化を課題に挙げています。数が増えた次の段階として、「安く泊まれる田舎」から「高くても泊まりたい田舎」への転換が求められている、ということです。
民泊・農家民宿との違い
「農泊」と「民泊」は字面が似ていて混同されやすい言葉ですが、切り口が違います。
民泊は、住宅の全部または一部を活用して旅行者に宿泊サービスを提供すること全般を指す一般的な呼び方です。観光庁の民泊制度ポータルでは、法令上の明確な定義はないとしたうえで、行う方法を3つに整理しています。
| 方法 | 手続き | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 旅館業法(簡易宿所) | 許可 | 営業日数の制限なし。住居専用地域では営業できない |
| 国家戦略特区法(特区民泊) | 認定 | 2泊3日以上の滞在が条件 |
| 住宅宿泊事業法 | 届出 | 年間提供日数は180日以内(条例でさらに制限される場合あり) |
つまり民泊は「どの法律の手続きで泊めるか」の話、農泊は「農山漁村で、食と体験を組み合わせて滞在してもらう旅」の話です。農泊地域の中には、旅館業法の許可を取った農家民宿もあれば、住宅宿泊事業法の届出による民泊も、旅館やホテルもあります。
自分の家や古民家で人を泊めたいときは、農泊という言葉とは別に、どの手続きで営業するのかを保健所や自治体の担当窓口で確認する必要があります。
補助金(農泊推進型)を使うには
「農泊 補助金」で調べる人の多くが行き着くのが、農林水産省の農山漁村振興交付金(地域資源活用価値創出対策)のうち農泊推進型です。
地域ぐるみの体制が前提
令和7年度の資料では、法人化された「中核法人」を中心に、宿泊業・飲食業・交通業・旅行業・金融業・農林水産業・小売業などの関係者が「地域協議会」に参画し、地域が一丸となって継続的に取り組む体制を支援の前提にしています。同資料には「農家民泊等の経営者が単独で事業を申請することは不可」と明記されています。
補助金があると聞いたので、うちの民宿だけで申請できますか?
この質問への答えは、上記のとおり原則として「単独では難しい」です。まず自分の市町村に既存の農泊の地域協議会があるかを確認し、あればそこに参加するのが入口になります。
支援の中身(令和7年度の資料の例)
- ソフト対策: 体制づくり、地域資源を活かした体験プログラムや食事メニューの開発、宿泊予約システム、人材の確保など。新たに取り組む地域向けの「農泊地域創出タイプ」は定額で上限500万円/年(事業期間は上限2年)
- ハード対策: 古民家等を活用した滞在施設・体験交流施設の整備(交付率1/2)、農家民泊等の小規模な改修(交付率1/2)など
交付金のメニュー・上限額・要件は年度ごとに変わります。上の数字は令和7年度予算時点の資料に基づくもので、申請を考える場合は、その年度の公募要領を農林水産省や地方農政局、市町村の担当課で必ず確認してください。
地域の事業者が農泊を商品にするには
農泊は、1軒の宿や1つの体験だけでは成り立ちにくい商品です。旅行者は「泊まる・食べる・体験する・移動する」をまとめて考えるので、地域のどこかが欠けると選ばれません。
実務では、次の順で整えていくと進めやすくなります。
- 地域の中で役割を分ける: 宿泊、食事、体験、送迎を誰が担うか。自分が担えない部分は近隣の事業者や地域協議会と組む
- 滞在プランとして見せる: 1泊2日・2泊3日のモデル行程を作り、観光コンテンツ(観光コンテンツ)としての体験を組み込む
- 移動を解決する: 農山漁村は駅から遠いことが多い。二次交通(二次交通)の手段と所要時間を必ず書く
- 売り先に合わせた情報を用意する: 旅行会社向けにはタリフ(料金表)(タリフ)とプロダクトシート(商品提案書)(プロダクトシート)を、個人旅行者向けにはOTAや自社サイトの掲載情報を整える
着地型観光(着地型観光)と同じく、地域側が企画して外に売る発想が農泊の土台です。
よくある質問
農泊をするのに、特別な許可や資格は必要ですか?
農泊という名前の許可はありません。ただし、お客様を有料で泊める場合は、旅館業法の許可、住宅宿泊事業法の届出、特区民泊の認定のいずれかが必要になるのが原則です。どの方法が使えるかは建物や地域によって異なるため、保健所や自治体の担当窓口に確認してください。
農泊と民泊は何が違いますか?
民泊は、住宅を使って旅行者に宿泊サービスを提供すること全般を指し、旅館業法・特区民泊・住宅宿泊事業法という法的な手続きの区分で語られます。農泊は、農山漁村に泊まり地域の食や体験を楽しむ旅のかたちを指す言葉です。農泊の宿として民泊が使われることもあります。
農泊の補助金は個人でも申請できますか?
農林水産省の農山漁村振興交付金(農泊推進型)は、地域協議会や中核法人を通じた地域ぐるみの取組を前提にしており、令和7年度の資料では農家民泊等の経営者が単独で申請することは不可とされています。まず市町村や地方農政局に、地域の協議会の有無と最新の公募要領を確認してください。
渚泊とは何ですか?
渚泊(なぎさはく)は、水産庁が推進している漁村地域での滞在型旅行のことです。農泊と同じく、漁村に泊まり、地域の海産物や漁業体験などを楽しんでもらう取り組みで、農泊の漁村版と考えると分かりやすいでしょう。
関連する用語
出典・参考
- 農林水産省「『農泊』の推進について」 — 農泊の定義(農山漁村滞在型旅行)、目的、農山漁村振興交付金(農泊推進型)の概要
- 農林水産省 農村振興局都市農村交流課「農泊をめぐる状況について」(令和7年1月10日時点) — p.1 農泊の狙い・通過型と滞在型の対比/p.2 農泊地域数656(R5年度末)/p.3 延べ宿泊者数794.2万人泊・平均宿泊費12,904円と観光全体15,140円/p.5-6 農泊推進型の支援内容・地域協議会と中核法人・単独申請不可(令和7年度予算)
- 水産庁「渚泊(なぎさはく)の推進」 — 渚泊=漁村地域における滞在型旅行
- 観光庁 民泊制度ポータルサイト「はじめに『民泊』とは」 — 民泊に法令上の明確な定義はない/旅館業法・特区民泊・住宅宿泊事業法の3類型と180日の上限
公開 2026.10.10 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。
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