Sales & Marketing

FAMトリップFamiliarization Trip

読み: ふぁむとりっぷ別名: FAMツアー・ファムトリップ・ファムツアー・招請旅行・下見旅行・視察ツアー・Fam Trip

旅行会社の商品企画・販売担当者やメディア関係者を現地に招待し、観光地・宿泊・体験を実際に視察・体験してもらう招請旅行。旅行会社には商品化を、メディアには記事や番組での発信を促すことが目的。

この用語の要点

  • Familiarization Trip(慣れ親しんでもらう旅)の略。日本語では「招請旅行」「視察ツアー」と呼ばれる
  • 旅行会社向けは「ツアーに組み込めるか」を確かめる場、メディア・インフルエンサー向けは「発信したくなるか」を確かめる場。同じ受け入れ方をしない
  • JNTO(日本政府観光局)も海外の旅行会社やメディアを日本に招く事業を行っており、自治体・DMO等がJNTOの受託事業として招請を依頼できるメニューもある
  • 旅行会社向けFAMで見られているのは景色よりも段取り:所要時間、言語対応、アレルギー・宗教食への対応、雨天時の代替、集合場所のわかりやすさ
  • FAMの価値は当日ではなく事後で決まる。タリフとプロダクトシートを当日中に渡し、1〜2週間以内にフォローする

FAMトリップとは:意味と語源

FAMは Familiarization(ファミリアライゼーション=慣れ親しませること)の略です。旅行業界では「旅行を売る人・伝える人に、まず現地を知ってもらうための招待旅行」を指し、FAMトリップ、FAMツアー、ファムトリップ、招請旅行、視察ツアーなどと呼ばれます。どれも中身は同じです。

海外の旅行会社のスタッフは、自分が行ったことのない場所を自信を持って売ることができません。メディアの記者も、体験していないものを生き生きと書くことはできません。そこで、自治体・DMO・観光協会・JNTO(日本政府観光局)などが主催者となって、旅費や宿泊を負担して現地に招きます。

JNTOは旅行会社招請(FAMツアー)の目的を、海外の旅行会社のツアー造成担当者や販売担当者を日本に招き、観光地の視察や観光プログラムの体験を通じて「訪日旅行商品の新規造成や販売強化を促す取り組み」と説明しています。

旅行会社向けFAMと、メディア・インフルエンサー向けFAMの違い

インバウンド集客の4つのアプローチB2B/B2C と Sales/Marketing の2軸で整理した4つのアプローチ。①コンテンツタリフの提示(B2B×Sales)②OTA活用(B2C×Sales)③FAMトリップ・インフルエンサー招聘(B2B×Marketing)④メディア取材・PR(B2C×Marketing)。B2B 旅行会社・ランドオペレーターに向けてTravel TradeB2C 旅行者本人に向けてDirect to Consumer売るSales商品として買ってもらう伝えるMarketing知ってもらい、信頼を得る①コンテンツタリフの提示NET価格・GROSS価格・キャンセルポリシー・所要時間・収容人数を明記したタリフとプロダクトシートを渡し、旅行会社のツアーに組み込みやすい状態をつくる②OTA活用Viator・GetYourGuide・Booking.com などに掲載。部屋や料理の写真ではなく「どんな体験が得られるか」を英語のタイトルと説明で見せ、FITに直接届ける③FAMトリップ・インフルエンサー招聘売るプロ(旅行会社)には下見に来てもらい定番コースへの組み込みを狙う。伝えるプロ(インフルエンサー)はターゲット国のSNSに合わせて招き、認知を広げる④メディア取材・PRJNTOの海外メディアツアーや英字媒体へのプレスリリースで第三者に取り上げてもらう。掲載実績は①の商談で信頼の「証拠」として効くどれか1つではなく、①の準備(タリフ)を土台に②〜④を組み合わせる。2026-08-10 Kachisai定例会セミナーより
4つのアプローチ。FAMトリップは「B2B×マーケティング」の象限。2026-08-10 Kachisai定例会セミナーの図を再作成

定例会では、招く相手を「売るプロ(旅行会社)」と「伝えるプロ(メディア・インフルエンサー)」に分けて考えるように整理しました。同じFAMという言葉でも、狙いと見られるポイントがまったく違うからです。

旅行会社向けFAMメディア・インフルエンサー向けFAM
招く相手商品企画・販売担当者、ランドオペレーター記者、編集者、ブロガー、SNS発信者
ゴールツアーの定番コースに組み込まれる記事・番組・投稿で発信される
見られる点時間配分、言語、食の対応、トイレ・駐車場、価格写真になる場面、語れる物語、作り手の人柄
当日渡すものタリフ、プロダクトシートプレス向け資料、写真素材、事実関係のメモ
成果が見えるまで翌シーズン以降のカタログ掲載数週間〜数か月後の掲載・投稿

JNTOもメディア招請を旅行会社招請とは別の事業として実施しており、その目的を「海外の一般消費者に対して影響力を持つ海外メディア自身の目線で、訪日旅行の魅力を発信すること」としています。

インフルエンサーの場合は、相手の国・地域で使われているSNSに合わせて人選することが前提になります。欧米豪ならInstagramやTikTok、台湾・香港ならブログやFacebookが中心、というように、届けたい市場から逆算して選びます。

地域の事業者にとって、なぜFAMが重要なのか

インバウンドの商流のうち、旅行会社経由(海外旅行会社 → ランドオペレーター → 地域の事業者)のルートでは、事業者が自分から海外の旅行会社に営業する機会はほとんどありません。旅行会社の担当者が地域に来るのは、多くの場合FAMのときです。つまりFAMは、数少ない対面の商談の場でもあります。

また、地方の小さな体験や宿は、資料だけでは価値が伝わりにくいものです。「囲炉裏で地元の人と昼食をとる」という一文は、実際に座って食べた人にとっては忘れられない場面になりますが、紙の上では他の地域の似た体験と区別がつきません。FAMは、比較表の上では負けてしまう小さな事業者が、体験の質で選ばれるチャンスです。

さらに、旅行会社向けのFAMでは「この事業者は段取りがきちんとしているか」も同時に見られています。ツアーに組み込むということは、旅行会社が自社のお客様をその事業者に預けるということです。集合時間に遅れない、英語の説明が用意されている、アレルギーの申告に答えられる、といった基本動作が、商品の魅力と同じくらい評価を左右します。

受け入れ側が準備すること

事前に確認すること

  • 主催者(自治体・DMO・JNTO等)に、参加者の国籍・会社・職種・人数を聞く。商品企画担当なのか、販売担当なのか、メディアなのかで説明の中身が変わる
  • 食事制限(アレルギー、ベジタリアン、ハラール等)の有無
  • 滞在時間。FAMは行程が詰まっていることが多く、通常の体験より短い時間で要点を見せる必要がある

当日用意するもの

  • タリフ(料金表)とプロダクトシート(商品提案書): NET価格・GROSS価格、所要時間、最少催行人数と受け入れ上限、キャンセルポリシー、集合場所。旅行会社向けなら最重要
  • 英語(または相手の言語)の1枚ものの説明資料
  • 名刺と、問い合わせ先のメールアドレス(返信できる担当者のもの)
  • メディア向けには、使用許諾を明記した写真素材と、名称・歴史・数字などの事実関係のメモ

終わったあとにすること

  1. 当日か翌日に、お礼と資料一式をメールで送る
  2. 1〜2週間以内に、質問や見積もり依頼が来ていないか確認し、来ていれば早めに返す
  3. 主催者に参加者の反応を聞き、次回の改善点として記録する
FAMでは「素晴らしかった」と言ってもらえたのに、その後なにも連絡が来ないのはなぜ?

考えられる原因の一つが、料金表や商品情報が相手の手元に残っていないことです。旅行会社の担当者は帰国後に何件ものFAM先を比較するので、提案に必要な情報が手元に残っているかどうかが、組み込まれるかどうかを分けます。

費用負担の考え方と、よくある誤解

FAMの旅費・宿泊費は、主催する自治体・DMO・JNTO・航空会社などが負担するのが一般的で、受け入れる事業者は体験や食事を無償または割引で提供する形で協力することが多いです。ただし、誰が何を負担するかは事業ごとに決まるので、協力を依頼された時点で「どこまでが自己負担か」を主催者に確認しておくのが安全です。

なお、JNTOは自治体・DMO・企業などから依頼を受けて、海外の旅行会社やメディアの招請を支援する受託事業も行っています。地域で独自にFAMを企画したい場合は、DMOや自治体を通じて相談する道があります。

よくある誤解1:「FAMに参加すれば、すぐに予約が入る」 旅行会社のツアーは企画から販売まで時間がかかります。成果が出るのは翌シーズン以降になることも珍しくありません。

よくある誤解2:「盛りだくさんに見せたほうがよい」 限られた時間で全部を見せようとすると、かえって印象が薄れます。ツアーに組み込まれる形(たとえば「90分・最大12名・英語ガイド付き」)をそのまま体験してもらうほうが、商品として判断しやすくなります。

よくある誤解3:「インフルエンサーを呼べば旅行会社にも売れる」 発信と商品化は別の仕事です。ただし、メディアに掲載された実績は、旅行会社へ営業するときの有力な材料になります。両方を順番に使い分けるのが現実的です。

よくある質問

FAMトリップとFAMツアーは違うものですか?

同じものです。FAMトリップ、FAMツアー、ファムトリップ、招請旅行、視察ツアーなど呼び方はいくつかありますが、いずれも旅行会社やメディアを現地に招いて体験してもらう旅行を指します。主催者や資料によって呼び方が違うだけなので、意味の違いを気にする必要はありません。

小さな体験事業者でもFAMの受け入れ先になれますか?

なれます。主催者は行程を組むときに、地域らしさのある体験や食事の場を探しています。地域のDMO・観光協会・自治体の観光担当課に、受け入れ可能な人数・時間・対応言語を伝えておくと、候補に入りやすくなります。そのうえで、当日すぐに渡せるタリフとプロダクトシートを用意しておくことが大切です。

FAMの受け入れで料金はもらえますか?

事業によって異なります。体験や食事を無償で提供する協力の形が多い一方、主催者が実費や料金を支払うケースもあります。原則として依頼を受けた段階で、参加人数・提供内容・費用負担の範囲を主催者と書面やメールで確認しておくと、後のトラブルを防げます。

インフルエンサーを選ぶときは、フォロワー数を見ればよいですか?

フォロワー数だけでは判断できません。届けたい国・地域のフォロワーがどれだけいるか、旅行や体験の投稿にどれだけ反応があるか、自分たちの体験と発信の雰囲気が合うかを確認します。主催者がDMOやJNTOであれば、人選の理由を聞いておくと、当日の見せ方も決めやすくなります。

出典・参考

  1. JNTO(日本政府観光局)「旅行会社招請(FAMツアー)について」 — FAMツアーの目的(ツアー造成担当者・販売担当者を招き、訪日旅行商品の新規造成や販売強化を促す)
  2. JNTO(日本政府観光局)「メディア招請」 — メディア招請の目的と内容(海外メディア自身の目線での発信、取材ツアーのアレンジ)
  3. JNTO(日本政府観光局)「地域へのインバウンドサポート受託事業」 — 受託事業のメニューに「海外の旅行会社・メディア招請支援」があること

公開 2026.10.05 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。

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