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サステナブルツーリズムSustainable Tourism

読み: さすてなぶるつーりずむ別名: 持続可能な観光・サステイナブルツーリズム・サステナブル・ツーリズム・JSTS-D・日本版持続可能な観光ガイドライン

訪問客、産業、環境、受け入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分配慮した観光(UNWTOの定義、JNTO訳)。地域の自然や文化を消費し尽くさず、次の世代も同じ価値を体験できる状態を保ちながら観光を続ける考え方。

この用語の要点

  • 対象は「環境」だけではない。文化の継承と、地域経済への還元を含めた3つの側面で考える
  • 観光庁は2020年6月に「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」を策定。国際基準GSTC-Dに準拠し、4分野・47の大項目・113の小項目で構成される
  • JSTS-Dは自治体・DMOが地域全体をマネジメントするための指標。個々の事業者は、地域の取組の担い手として関わる
  • 北欧など一部の海外市場では、旅行会社がサステナビリティを意識したツアー造成を前面に打ち出している(JNTOストックホルム事務所)
  • 事業者の取り組みは、地元の雇用・仕入れ、資源を傷めない人数設計、文化の背景を正しく伝えることから始められる

サステナブルツーリズムとは:環境・文化・経済の3つの側面

サステナブルツーリズム(持続可能な観光)は、UNWTO(国連世界観光機関。現UN Tourism)の定義で「訪問客、産業、環境、受け入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分配慮した観光」とされています。

「サステナブル」と聞くと、ごみ削減や脱プラスチックといった環境対策を思い浮かべがちですが、対象はそれだけではありません。JNTO(日本政府観光局)は、サステナブル・ツーリズムの推進にあたって次の3つの柱を掲げています。

  • 環境: 自然や生物多様性の保全に貢献する
  • 文化: 地域の有形無形の伝統・文化資産の保存・継承に貢献する
  • 経済: 特定の地域や時期に偏らない誘客で、地域経済の活性化と長期的な雇用創出につなげる

つまり、観光客が来ることで自然が傷み、住民の暮らしが圧迫され、利益が地域の外に流れてしまうなら、それは持続可能ではない、という考え方です。

日本の指標:JSTS-D(日本版持続可能な観光ガイドライン)

観光庁は2020年6月、日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D: Japan Sustainable Tourism Standard for Destinations)を策定しました。観光地の持続可能性に関する国際基準であるGSTC-D(Global Sustainable Tourism Council の観光地向け基準)に準拠した指標です。

観光庁の研修ページによると、JSTS-Dは地域のマネジメント、社会経済、文化、環境の4分野、計47の大項目と113の小項目から構成されます。目的は、「住んでよし、訪れてよし」の観光地域づくりのため、観光客と地域住民の双方に配慮し、データ計測と中長期的な計画にもとづいて観光地をマネジメントすることです。

JSTS-Dの主な使い手は地方自治体とDMO(観光地域づくり法人)です。地域はJSTS-Dにもとづく自己評価(アセスメント)を行い、一定の基準を満たせばロゴマークの使用を申請できます。観光庁は指標を理解するための研修動画(全33本)や、自己評価用のアセスメントレポートも公開しています。

個々の宿や体験事業者がJSTS-Dの認定を受ける仕組みではありません。ただ、地域がJSTS-Dに取り組むとき、実際の受け入れ現場を担うのは事業者です。地元からの仕入れ、混雑の管理、文化の伝え方といった項目は、事業者の協力なしには達成できません。

なぜ地域の事業者にとって重要なのか

理由は2つあります。

  1. 海外の旅行会社や旅行者が、持続可能性を見て商品を選び始めている。 JNTOストックホルム事務所は、北欧では環境意識の高さから飛行機より鉄道が選ばれることも珍しくなく、旅行会社が「いかにサステナビリティを意識してツアーを企画造成しているか」を大々的にアピールしていると紹介しています。そうした旅行会社が日本でツアーを組むとき、組み込む宿や体験にも同じ説明を求めることになります。
  2. 地域の資源そのものを守ることが、商品の価値を守ることになる。 里山、漁村の暮らし、祭り、手仕事といった地方の観光資源は、一度傷むと元に戻りません。人数を増やし続けるより、資源を守りながら単価と満足度を上げるほうが、小さな事業者には長く続けやすい形です。

JNTOは、持続可能性を体現する日本の観光コンテンツを紹介する英語のデジタルパンフレット「EXPLORE DEEPER -Sustainable Travel Experiences in JAPAN-」も制作しており、サステナブルであることは海外への発信材料としても扱われています。

事業者ができる取り組み

大きな設備投資をしなくても、次のような取り組みから始められます。

経済:お金を地域に残す

  • 食材や備品をできるだけ地元から仕入れる
  • ガイドやスタッフを地元で雇う
  • 近隣の事業者を紹介し、旅行者の消費を地域内に回す

文化:背景を正しく伝える

  • 祭りや信仰、伝統工芸を扱うとき、担い手の了解と敬意を前提にする
  • 「見せ物」にせず、意味や歴史を説明する
  • 撮影してよい場所・いけない場所をはっきり伝える

環境:資源を傷めない設計

  • 一度に受け入れる人数の上限を決める(自然や集落が受け止められる量に合わせる)
  • ごみの持ち帰り、決まった道を歩くなどのルールを事前に案内する
  • 季節や時間帯を分散させ、混雑を避ける

伝える

取り組みは、やっているだけでは旅行会社に伝わりません。プロダクトシート(商品提案書)に「地元食材の割合」「受け入れ人数の上限とその理由」「地域への還元の仕組み」などを短く書いておくと、サステナビリティを重視する旅行会社に説明しやすくなります。根拠のない「エコ」「環境に優しい」といった表現は、かえって信頼を損ないます。

具体例と、よくある誤解

たとえば、集落を歩くガイドツアーなら、次のように組み立てられます。

項目持続可能性への配慮
人数1回8名まで。細い路地と住民の生活に配慮
ガイド集落に住む人が案内し、ガイド料が地域に残る
昼食集落の家庭料理を地元の女性グループが提供
ルール民家の敷地には入らない、撮影は許可を得てから
うちは小さな宿で、太陽光パネルもないし、サステナブルなんて言えない。

こうした声は少なくありませんが、サステナブルは設備の話だけではありません。地元の食材を使い、地元の人を雇い、地域の文化を丁寧に伝えている時点で、経済と文化の側面では既に取り組んでいることになります。足りないのは「言葉にして示すこと」である場合が多いのです。

もう一つの誤解は、「持続可能な観光=観光客を減らすこと」という理解です。目指すのは観光をやめることではなく、地域が受け止められる形で観光を続けることです。特定の場所に人が集中しすぎる問題はオーバーツーリズムとして別に扱われ、その対策の一つが地方への分散です。地方の事業者にとっては、持続可能性への配慮がそのまま選ばれる理由になりえます。

よくある質問

小さな事業者でもJSTS-Dの認証を受けられますか?

JSTS-Dは自治体やDMOが地域全体をマネジメントするための指標で、個々の事業者を認証する仕組みではありません。ロゴマークも地域単位で申請するものです。事業者としては、地域のDMOや自治体がJSTS-Dに取り組んでいるかを確認し、地元仕入れや受け入れ人数の管理など、現場でできる項目に協力する形で関わるのが現実的です。

サステナブルツーリズムに取り組むと、売上は下がりませんか?

受け入れ人数を絞ると、一回あたりの客数は減ることがあります。そのぶん、体験の質と背景の説明を厚くし、単価と満足度を上げる設計にするのが基本的な考え方です。持続可能性を重視する旅行会社や旅行者に選ばれやすくなる面もあります。どの程度の効果があるかは商品や市場によって異なるため、小さく試して数字で確かめるのが確実です。

「エコ」「サステナブル」と宣伝に書いてもよいですか?

具体的な根拠があれば書けますが、内容を示さずに「環境に優しい」「サステナブル」とだけ書くのは避けたほうが無難です。誇張と受け取られると信頼を損ないます。「食材の◯割を町内の農家から仕入れ」「1回の定員は8名」のように、確認できる事実で示すほうが、旅行会社にも旅行者にも伝わります。

サステナブルツーリズムとエコツーリズムは同じものですか?

同じではありません。エコツーリズムは主に自然環境や地域の文化を体験しながら保全につなげる旅のかたちを指します。サステナブルツーリズムは、環境・文化・経済の3つの側面から観光全体のあり方を考える、より広い考え方です。エコツーリズムは、サステナブルツーリズムを実現する手段の一つと整理すると分かりやすくなります。

出典・参考

  1. 観光庁「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」 — JSTS-Dの目的(住んでよし訪れてよし・観光客と住民双方に配慮)、対象(地方自治体・DMO)、国際基準準拠、公開資料(本体・付録・アセスメントレポート)
  2. 観光庁「持続可能な観光地づくりに向けた研修」 — 4分野(地域のマネジメント・社会経済・文化・環境)、47の大項目と113の小項目、研修動画全33本
  3. 観光庁「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)ロゴマーク」 — 2020年6月策定の記載、地域単位でのロゴマーク使用申請、2024年6月28日の承諾基準改定
  4. JNTO「サステナブル・ツーリズムの推進」 — UNWTOの定義(和訳)、環境・文化・経済の3つの柱、デジタルパンフレット「EXPLORE DEEPER」
  5. JNTO インバウンドノウハウ「北欧市場にぜひ注目を(JNTOストックホルム事務所インタビュー)」 — 北欧の旅行会社がサステナビリティを意識したツアー造成を大々的にアピールしている点、鉄道移動の選好(2024年10月18日公開)

公開 2026.10.13 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。

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