Pricing & Terms
レベニューマネジメントRevenue Management
過去の予約等のデータをもとに需要を予測し、競合の価格や販売状況も踏まえて、単価と販売方法(どの販路で、いつ、いくらで売るか)を決めることで、限られた在庫から得られる売上を最大化する経営手法。
この用語の要点
- 観光庁の「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」は、需要予測と競合の状況を踏まえて客室単価や販売方法を決めることをレベニューマネジメントと位置づけている
- 対象になるのは「在庫が限られ、売れ残りを翌日に持ち越せない」商品。宿の客室だけでなく、定員のある体験の各回にも当てはまる
- 動かせるのは価格だけではない。販路ごとの枠の配分、時間帯や催行日の設計、最少催行人数も手段になる
- 旅行会社との取引は1年単位のNET価格(タリフ)が基本。日々の値動きはOTA・直販側で行い、タリフは時期区分を事前に決めておく形で両立させる
- 観光庁は観光DXの一環として、地域単位で予約情報や販売価格を共有するレベニューマネジメントの取組も推進している
レベニューマネジメントとは
レベニューマネジメント(Revenue Management、略してRM)は、「同じ商品を、いつ・どこで・いくらで売るか」を需要に合わせて決め、売上を最大化する考え方です。航空券やホテル・旅館の客室のように、在庫と販売期限がはっきりした商品の販売で使われています。
観光庁の「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」では、取組事項の一つとして「レベニューマネジメントシステムの導入」を挙げ、レベニューマネジメントを次のように説明しています。
過去の予約等のデータを元に需要を予測し、競合の単価及び販売状況も踏まえて、客室単価や販売方法の決定(レベニューマネジメント)
同ガイドラインは、その目的を「客室在庫数が限られている宿泊施設において、システムが提示するデータに基づいて客室単価を設定し、宿泊施設トータルでの売上最大化を目指す」こととしています。
ポイントは「在庫が限られている」ことです。今夜売れ残った部屋は、明日まとめて売ることができません。この性質を持つ商品であれば、宿でなくても同じ考え方が使えます。
なぜ宿泊業で重視されるのか
観光庁の宿泊旅行統計調査(2025年・年間値の確定値)によると、客室稼働率は全体で61.6%で、施設タイプ別では次のように大きな差があります。
| 施設タイプ | 客室稼働率(2025年・確定値) |
|---|---|
| ビジネスホテル | 75.3% |
| シティホテル | 74.1% |
| リゾートホテル | 56.9% |
| 旅館 | 38.2% |
| 簡易宿所 | 29.6% |
稼働率は「利用客室数÷総客室数」です。平均の数字の裏には、満室で断っている日と、ほとんど空いている日が混ざっています。満室の日に安く売っていれば取りこぼし、空いている日に高いままなら売れ残る。この両方を減らすのがレベニューマネジメントの役割です。
観光庁は観光DXの取組として、宿泊事業者が地域単位で予約情報や販売価格等を共有するレベニューマネジメントを推進するとしており、令和8年度の補助事業でも、レベニューマネジメント等の収益・生産性向上に役立つデジタルツールの導入支援を挙げています。個々の施設の工夫にとどまらず、地域全体で需要の山と谷をならす発想です。
体験事業にどう応用するか
地域の体験プログラムも、「1回あたりの定員」という在庫を持ち、催行しなかった回は取り戻せない点で客室と同じです。動かせる手段は次の4つです。
- 価格の時期区分: 繁忙期・通常期・閑散期、平日・土日祝で価格を分ける
- 時間帯と回数の設計: 人気の時間帯に回を増やす、需要の少ない時間帯は催行しないか別の商品(少人数の特別版など)にする
- 最少催行人数と定員: 閑散期は最少催行人数を下げて催行機会を増やす、繁忙期はプライベート枠を高めに設定する
- 販路ごとの枠配分: 旅行会社向け・OTA向け・直販向けに、どの日の何枠を出すかを決める
値段を上げたら客が減るだけではないか。うちのような小さな体験でもやる意味があるのか。
よく出る質問です。レベニューマネジメントは「値上げ」の技術ではありません。満席になる日に安すぎる価格を直し、空く日に人を呼ぶための技術です。予約の記録が1年分あれば、どの月・曜日・時間帯が埋まり、どこが空いたかが見え、手を打つ場所が分かります。
NET価格・タリフとの関係:販路ごとに考える
体験事業でレベニューマネジメントを考えるとき、必ずぶつかるのが旅行会社取引との関係です。
旅行会社やランドオペレーターとの取引は、コンテンツタリフに載せたNET価格(卸値)を1年単位で固定するのが基本です。旅行会社のツアーは数か月〜1年前に価格を決めて販売するため、途中で価格が変わると商品を作れません(関係はNET価格・GROSS価格)。
そこで、販路ごとに役割を分けます。
| 販路 | 価格の動かし方 |
|---|---|
| ①旅行会社経由 | タリフに時期区分(繁忙期・通常期など)を最初から書いておく。年度途中は変えない |
| ②OTA | 掲載するプランと価格を時期に応じて調整できる。ただしタリフのGROSS(販売定価)との整合に注意 |
| ③直販 | 最も自由に動かせる。早期予約割引や閑散期の限定プランなどを試しやすい |
気をつけたいのは、直販やOTAで、旅行会社に渡しているNET価格に近い値段まで下げて売ることです。旅行会社の販売価格より安く一般に売られていると分かれば、取引が止まる原因になります。下げるときは、価格そのものより「平日限定の少人数プラン」など商品の違いをつくる方が安全です。
計算例:同じ定員でも、売上はここまで変わる
定員8名、1回6,000円(税込・直販価格)の体験を、週末と平日に1回ずつ、4週間催行する場合を考えます。
価格を一律にしたとき
- 週末: 毎回8名で満席、問い合わせは毎回あと数名あったが断った → 8名×6,000円×4回=192,000円
- 平日: 毎回2名 → 2名×6,000円×4回=48,000円
- 合計 240,000円
時期区分を入れたとき(仮定)
- 週末を7,000円にして、引き続き満席 → 8名×7,000円×4回=224,000円
- 平日を5,000円にし、地域の宿と組んで宿泊客向けに案内した結果、平均4名 → 4名×5,000円×4回=80,000円
- 合計 304,000円
この数字は説明のための仮定で、価格を変えれば必ずこうなるわけではありません。大事なのは考え方の順番です。
- まず実績を記録する(回ごとの予約数、断った件数、問い合わせ数)
- 断っている回と空いている回を分ける
- 断っている回は価格を見直す、空いている回は集客の手段と価格を見直す
- 1〜2か月試して、記録と比べる
断った件数を記録していない事業者が多いのですが、それがないと「満席の回の需要がどれだけ大きいか」が分かりません。
よくある誤解と、似た言葉との違い
「レベニューマネジメント=ダイナミックプライシング」ではありません。 ダイナミックプライシングは、需要に応じて価格を細かく変動させる手法で、レベニューマネジメントの手段の一つです。レベニューマネジメントは価格に加えて、販路ごとの枠配分や商品・時間帯の設計まで含む、より広い考え方です。
「イールドマネジメント」は、ほぼ同じ意味で使われることのある言葉です。資料によって呼び方が違うだけの場合も多いので、言葉の違いより「何を調整しているか(価格か、枠か、販路か)」に注目して読むと混乱しません。
「システムを入れないとできない」わけでもありません。 観光庁のガイドラインはシステムの導入を取組事項としていますが、小さな体験事業であれば、予約記録の表計算と、時期区分を入れた料金表から始められます。客室数が多い宿や、複数の販路の在庫を日々調整する必要が出てきた段階で、システムの導入や補助事業の活用を検討します。
「高くするほど良い」わけではありません。 口コミや旅行会社の評価は、価格に見合う体験だったかで決まります。価格を上げるなら、所要時間・人数・内容など、何が変わるのかをプロダクトシート(商品提案書)で説明できるようにしておきます。
よくある質問
レベニューマネジメントは、旅館やホテルだけのものですか?
宿泊業で広く使われていますが、考え方は「在庫が限られ、売れ残りを持ち越せない」商品なら応用できます。定員のある体験プログラムや、席数の決まった食事、ガイドの稼働日などが当てはまります。価格だけでなく、時間帯や催行日、販路ごとの枠の配分も調整の手段になります。
旅行会社に渡しているタリフの価格も、時期によって変えていいのですか?
繁忙期・通常期などの時期区分を、タリフを渡す時点で明記しておくのは一般的なやり方です。避けたいのは、有効期間の途中で一方的に価格を変えることです。旅行会社は事前に決めた価格で商品を販売しているため、変更する場合は次の年度のタリフに反映させ、早めに伝えるのが基本です。
小さな体験事業者は、まず何から始めればいいですか?
最初は回ごとの予約人数、満席で断った件数、問い合わせの数を記録することです。1年分あれば、どの月・曜日・時間帯が埋まり、どこが空いているかが分かります。そのうえで、断っている回は価格を、空いている回は集客の方法と価格を見直すと、手を打つ場所を絞り込めます。
レベニューマネジメントのシステム導入に使える補助金はありますか?
観光庁は観光DXの補助事業で、レベニューマネジメント等の収益・生産性向上に役立つデジタルツールの導入支援を挙げています。ただし対象者・補助率・公募時期は年度や事業ごとに異なり、自治体やDMOが申請主体になる場合もあります。観光庁の公募情報と各事業の公募要領で確認してください。
関連する用語
出典・参考
- 観光庁「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」 — 取組事項b-16「レベニューマネジメントシステムの導入」(p.44): 需要予測と競合の単価・販売状況を踏まえた客室単価・販売方法の決定、取組の目的・経営上のメリット
- 観光庁「観光DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」 — 地域単位での予約情報・販売価格等の共有によるレベニューマネジメントの推進、令和8年度補助事業でのRM等に資するデジタルツール導入支援
- 観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年・年間値(確定値))」報道発表資料 — 客室稼働率 全体61.6%、旅館38.2%、リゾートホテル56.9%、ビジネスホテル75.3%、シティホテル74.1%、簡易宿所29.6%(p.3)
- 観光庁「宿泊旅行統計調査 用語の解説」 — 客室稼働率=利用客室数÷総客室数の定義
公開 2026.10.15 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。
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