Policy & Data
関係人口Related Population
移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のこと(総務省)。人口減少で地域づくりの担い手が不足するなか、地域外から継続的に関わる人として期待されている。
この用語の要点
- 総務省の整理では、住んでいる人(定住人口)と一度訪れる人(交流人口)の間にいる、地域と継続的に多様な形で関わる人
- 観光客は「交流人口」に当たる。関係人口は、観光をきっかけに何度も訪れたり、地域の活動にかかわったりするようになった人
- 総務省は、居住地以外の地域とのつながりをアプリで登録・可視化する「ふるさと住民登録制度」の実装を進めている(2026年10月時点)
- 観光事業者にとっては、リピーター・応援者・紹介者を「客数」とは別の指標で捉え直す考え方
- ワーケーションや農泊のような滞在型の旅は、関係人口の入口として位置づけられることが多い
関係人口とは:定住人口と交流人口の「間」
地域の人口を語るとき、これまでは二つの数え方が中心でした。
- 定住人口: その地域に住んでいる人。住民票の人口
- 交流人口: 観光やビジネスで一時的に訪れる人。観光客数として数えられる
総務省は、このどちらでもない人々を「関係人口」と呼んでいます。移住した定住人口でもなく、観光に来た交流人口でもなく、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことです。
たとえば次のような人が当てはまります。
- 毎年同じ時期に同じ集落を訪れ、祭りの準備を手伝う人
- 都市に住みながら、出身地の特産品を周りに紹介し続けている人
- 副業やプロジェクトで、離れた地域の事業者と継続的に仕事をしている人
- 旅先で知り合った宿の主人と連絡を取り合い、友人を連れて再訪する人
住民票は移していないし、「観光客」と呼ぶには関わりが深い。こうした人を地域の力として数えよう、というのが関係人口の考え方です。
なぜ国が関係人口を進めるのか
背景にあるのは、地方の人口減少と高齢化です。総務省は、地域づくりの担い手が不足するなかで、地域外の人材が地域づくりにかかわることへの期待を示しています。全員に移住してもらうのは現実的ではありませんが、「住まないけれど関わる人」なら増やせる、という発想です。
総務省はこの考え方をもとに、地方公共団体による関係人口の創出・拡大の取り組みを支援し、ポータルサイトで各地の事例を紹介してきました。
さらに現在、「ふるさと住民登録制度」 の実装を進めています。総務省の制度案内によると、これは居住地以外の特定の地域とのつながりをアプリで登録・可視化し、継続的な関係をつくる仕組みです。
| 区分 | 登録の要件 | できること |
|---|---|---|
| ベーシック登録 | 誰でもすぐに登録できる | 地域の独自情報の閲覧、担い手活動への参加、登録証の発行 |
| プレミアム登録(3地域まで) | 年3回以上の担い手活動への参加と、マイナンバーカードによる本人確認 | 上記に加え、各種サポート施策の利用 |
(総務省「ふるさと住民登録制度ナビ」をもとに作成。2026年10月時点で総務省は「実装に向けて進めている」としており、内容は変わる可能性があります)
観光事業者にとっての意味
観光の世界では、長く「何人来たか」(交流人口)が成果の物差しでした。関係人口の考え方は、そこに「何人と関係が続いているか」という別の物差しを加えます。
地域の小さな宿や体験事業者にとって、これは身近な話です。売上を支えているのは、新規の観光客だけでなく、毎年来てくれる常連、友人を紹介してくれる人、SNSで発信してくれる人であることが多いからです。こうした人は、観光統計の上では「年に1回来た観光客」としか数えられませんが、事業にとっての価値はそれ以上です。
観光客数は横ばいなのに、売上は伸びている。数字の説明がつかない。
こうした状況の裏には、リピーターや紹介客の増加があることがあります。関係人口という言葉は、この「数に表れにくい関係」を、自治体や地域の会議で説明するための共通言語として使えます。
また、観光庁はワーケーションの受け入れが地域にもたらすメリットとして、関係人口の増加を挙げています。長く滞在し、地域の人と顔を合わせる旅は、一度きりの観光客を関係人口に変える入口になりやすいということです(ワーケーション・農泊)。
実務での活かし方
関係人口を増やすために、特別な事業を始める必要はありません。多くは、すでにいるお客様との関係を「続く形」にする工夫です。
- 連絡が続く手段を持つ。 OTA経由の予約では、滞在後にお客様と連絡を取る手段が残らないことがあります。チェックアウト時に、ニュースレターやSNSのフォローを案内する
- 「次に来る理由」を用意する。 季節ごとの行事、収穫の手伝い、年に一度の集まりなど、再訪の口実になる予定をあらかじめ伝えておく
- お客様に役割を渡す。 祭りの準備、田植え、イベントの運営など、地域の活動に参加できる枠をつくる。手伝った経験は、ただ泊まった経験より強く記憶に残る
- 自治体の取り組みとつなぐ。 自治体が関係人口やふるさと住民登録の取り組みを行っている場合、事業者の体験や宿泊が「担い手活動」や特典の受け皿になりうる。地域の担当課やDMOに一度問い合わせておく
関係人口は、すぐに売上として表れるものではありません。ただ、繁忙期だけでなく閑散期に来てくれる人、口コミで新しいお客様を連れてくる人が少しずつ増えることで、経営の安定につながっていきます。
よくある誤解
「関係人口=移住予備軍」ではありません。 関係人口が移住につながることもありますが、総務省の整理は「移住しなくても関わる人」を地域の力として捉えるものです。移住を前提にした働きかけは、かえって相手の負担になることがあります。
「ふるさと納税をした人=関係人口」とは限りません。 寄附をきっかけに地域との関わりが始まることはありますが、関係人口の考え方で重視されるのは、継続的で多様な関わりです。寄附を一度したかどうかより、その後も地域と行き来や交流が続いているかどうかが目安になります。
関係人口は観光の代わりではありません。 関係の多くは、最初の一度の訪問から始まります。観光客を迎える仕事は、関係人口の入口を担っているとも言えます。
よくある質問
関係人口と交流人口は何が違うのですか?
交流人口は、観光やビジネスで地域を一時的に訪れる人を指し、観光客数などで数えられます。関係人口は、移住した定住人口でも観光に来た交流人口でもなく、地域や地域の人々と継続的に多様な形で関わる人です。観光客として来た人が、再訪や地域活動への参加を重ねるうちに関係人口になる、という流れで考えると分かりやすいでしょう。
ふるさと住民登録制度は、もう始まっていますか?
総務省の制度案内では、2026年10月時点で「実装に向けて進めている」とされ、モデル事業の進捗が公表されています。ベーシック登録とプレミアム登録の2区分が示されていますが、開始時期や細部は今後変わる可能性があります。最新の状況は総務省の「ふるさと住民登録制度ナビ」で確認してください。
小さな宿や体験事業者でも、関係人口づくりに関われますか?
関われます。むしろ、宿の主人や体験の講師と顔の見える関係ができることが、関係人口の出発点になる場合が多くあります。連絡が続く手段を持つこと、次に来る理由を伝えること、地域の活動に参加できる枠をつくることなど、日々の接客の延長で取り組めることから始めるのが現実的です。
関連する用語
出典・参考
- 総務省「関係人口・ふるさと住民」 — 関係人口の定義(定住人口でも交流人口でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々)、担い手不足を背景とした期待、事例・取り組みへのリンク
- 総務省「ふるさと住民登録制度ナビ - 制度の概要」 — 制度の目的、ベーシック登録・プレミアム登録の要件とできること、「実装に向けて進めている」との記載(2026-10-17確認)
- 観光庁 ワーケーション&ブレジャー「受入地域・観光事業者の皆様」 — 受入地域のメリットとして関係人口の増加を挙げている箇所
公開 2026.10.17 / 執筆: 一般社団法人Kachisai 事務局。定例会で会員事業者から受けた質問と、上記の一次情報をもとに作成しています。内容の誤りや古くなった情報はお問い合わせからお知らせください。
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